2024年春号表紙

動静脈連携に向けて

株式会社浜田
太陽光パネル資源循環の取組 全国リユース・リサイクル体制の整備へ

資源循環の推進のためには動静脈連携の推進が欠かせません。本誌では、こうした取組の事例をご紹介していく予定にしています。今回は、㈱浜田が昨年7月に丸紅㈱と共同で立ち上げた太陽光パネルの資源循環サービスについてご紹介します。(この記事は、財団が㈱浜田の濵田篤介代表取締役にお時間を取っていただきお伺いしたお話を財団の責任で取りまとめたものです。濵田社長にはご多忙のなかご協力をいただき感謝申し上げます。)

太陽光パネルの資源循環に取り組むことになった経緯

日本では2012年にFITが開始しており大量の太陽光パネルが導入されました。パネルの寿命は20年~25年のため、環境省の推定廃棄量によると、2030年代後半以降年間50~80万トン規模で太陽光パネルが廃棄されると予測されています。この状況を踏まえ、2014年に社内の若手より太陽光パネルのリサイクル事業化の提案がありました。社内では「事業化は時期尚早ではないか」と意見があったものの、社会問題化することはほぼ確実です。このような有望分野への投資は競争力を持ち事業化でき、更に市場で評価され成長していきます。そのため太陽光パネルのリユース・リサイクル事業の準備を進める決断を行い、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2015年度補助事業の採択を受け、株式会社エヌ・ピー・シーと共同でホットナイフ分離法によるリサイクル技術の開発を行いました。
現在当社以外にもリサイクルを行う会社は存在するものの、処理方式によっては素材ごとに分別できないことから、リサイクルできず埋立されます。今後は将来の大量廃棄の時代へ備えて、これまで殆どが埋立処分されていた太陽光パネルを排出事業者が安心して適正にリユース・リサイクルできる資源循環の体制を構築すべきと考え、丸紅株式会社と合弁会社を設立しました。

丸紅とのリユース・リサイクル関連サービスの経緯と概要

創業当時より当社で取り扱う鉄くず分野にて丸紅株式会社(現丸紅テツゲン株式会社)とは取引がございました。丸紅株式会社では化学品本部にて新品の太陽光パネルを販売しており、また電力本部では、国内外で太陽光発電事業に取り組まれていることから、太陽光パネルの廃棄問題にも高い関心をお持ちでした。さらに2021年からは環境省からの委託を受け、資源循環を目的とした使用済み太陽光パネルの情報管理プラットフォームの構築に取り組んでおり、同じ志を持つ当社も本プロジェクトへ参画いたしました。
2023年には資源循環ルートを選択できるような情報管理プラットフォームを構築するために、丸紅株式会社と当社で共同出資の上リクシア株式会社を設立し、太陽光パネルのリユース・リサイクル関連サービスを開始しました。サービス開始から約6か月ではありますが、これまでに約900枚のリユースと約140枚のリサイクルを行っています。

リクシアの資源循環プラットフォームの概要

現在、他業界からの参入も含め多くの事業者が太陽光パネルのリサイクル処理事業に参入しています。一方で処理技術は多岐にわたり、排出事業者自身が環境面と経済面で合理的なリサイクル事業者を選定することが困難な状況です。リクシアの提供する情報管理プラットフォームでは、発生場所と単価から最適な資源循環ルートを選択できるようになればと考えています。最初はアナログで対応する部分もありますが、将来的には情報管理プラットフォームによる自動マッチングに移行していきたいと思っています。

太陽光パネルの資源化技術の現状

国内循環体制を築くには出口戦略が大事になります。当社ではアルミフレームやジャンクションボックスはアルミや銅としてリサイクルしており、セルシートは銀が含まれているため非鉄精錬会社で回収されリサイクルされます。太陽光パネルはガラスが約7割を占めており、一部板ガラスへの水平リサイクルができるものの、殆どはグラスウール等ダウンリサイクルされているのが現状です。現時点ではまだまだ発生量が少ないので、一定の品質以上のガラスカレットは、カレット買取業者により品質調整を行いリサイクルできますが、それ以外の品位のものは、路盤材や埋め立てに回ることが多いと聞いております。
2030年代後半の太陽光パネルの発生量は約50万トンと想定されているため、単純計算で約35万トン規模のガラスが発生します。これに対して、板ガラスやグラスウールへのリサイクルは約2万トン程度の需要と予測しており、約33万トンのガラスが宙に浮いた状態となります。この規模のリサイクルは市場の大きい土木資材の骨材利用が最も有力であり、まとまった数量を安定供給する必要があるので、今後は事業者間の協力連携が不可欠と考えています。

太陽光パネルから選別したガラスの出口戦略 太陽光パネルから選別したガラスの出口戦略

一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会の活動

発電事業者や太陽光パネルメーカー、リサイクル装置メーカー、ガラスメーカー、学術研究者などの様々な主体と連携し、太陽光パネルの適切なリユース・リサイクルスキームの確立を目的として、2022年11月に一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会を設立しました。現在協会には約40社加盟して頂いております(2024年4月現在)。
現状自然災害やリパワリングによりリユース可能なパネルが発生しています。リユ―スパネルの活用は、利用する現場での不具合やトラブル等にならないよう、検査方法や、検査の標準化、品質基準づくりが必要です。当社では外観検査や性能評価を行うことで発電に問題のないパネルのみを取り扱います。2023年には当社が提供するリユースパネルを大成建設株式会社の仮設事務所に設置した実績があり、同社では環境負荷低減を目指したNearly ZEB認証を取得されました。
太陽光パネルは地方に設置されているため、分散的に使用済みパネルが発生します。いかに効率的に回収・運搬し、リサイクルするかが重要となります。個社レベルではなく、様々な企業と連携し課題の解決に取り組むために、協会のネットワークを大きな力にし、大量廃棄に備えたいと思っています。

資源循環の推進のために

太陽光パネルのように、世の中にまだ仕組みがない新たな資源循環の仕組みを作る場合、効率性や合理性、スピードの面でも、個社の努力だけでは難しいです。皆様と一緒に知恵を出し、汗をかき国内循環の仕組みを作れればと思います。
太陽光パネルリユース・リサイクル協会は、SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」でも掲げている通り、様々な業界から幅広いご参加をお待ちしています。皆様と力を合わせて太陽光パネルの国内循環に向けた取り組みをできればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

PAGETOP