ご挨拶

 世界各国は、未だ沈静化しないコロナ禍にあって、ロシアのウクライナ侵略による物不足とインフレという新たな苦難に直面しております。
 我が国も、更に円安という要因がこれに重なり、他国以上に経済の舵取りが難しい状況にあります。
 他方、最大課題である地球温暖化による異常気象は、年々歳々その激しさを増し、今年も或る所では集中豪雨による洪水を、また或る所では大規模な山火事を、そして更に或る所では大干魃をというように、地球上の各地で猛威をふるい人智を超える激甚な災害をもたらしております。
 そんな中、我が国政府は、当面の課題を解決するための緊急対策とGXに代表される中期対策を織り交ぜた各種の経済施策を断行することによって、「循環経済」「脱炭素社会」と言った新しい社会への構造転換を図り、サステナビリティーの確保を目指しております。

 皆様方ご承知のとおり、私共の産廃振興財団は、国、地方公共団体、産業界の付託を受け、廃棄物の適正処理や廃棄物資源の循環に資するための各種事業の推進を通して、社会貢献を目指している公益財団であります。

 今、私共財団が手掛けている事業は、次の4つに大別されます。

 先ず第1は「債務保証事業」であります。これは、処理業者が産廃処理のモデルとなるような優良な処理施設を整備しようとするに際して、金融機関からの借入れをスムーズにするために債務保証をする事業で、毎年1件程度、1件あたり5億円程度を実行しております。
 
 第2の事業は、「助成事業」であります。これは、産廃の3Rの推進や環境負荷の低減に資するような技術開発や起業化を志している処理業者に対して助成する事業で、毎年2.~3件トータル500万円程度の助成を行っております。
 
 これら「債務保証事業」と「助成事業」については、随時募集しておりますので、希望される方はどしどし応募していただきたいと思っております。 
 
 次に第3の事業は、「振興事業」でありますが、これは優良な処理業者の育成や排出業者に対する処理業者情報の提供等を目的とするもので、多岐に亘った事業を展開しております。
 その一つは、産廃処理に関する様々な情報を集約した「さんぱいくん」というシステムの運営を通じて関連情報を広く関係者に提供すると共に、履歴証明や適合証明等の優良認定基準に基づく証明事業を行っております。
 その二は、「産業廃棄物処理業経営塾」を主催して、産廃処理業の次代を担う人材の育成に尽力する一方で、経営層に対する問題解決の場として、「経営戦略セミナー」や「経営相談会」を提供する事業を行っております。
 この内、特に「経営塾」は大変人気を博しておりまして、毎年50人程度の塾生が挙って受講しております。また、歴代の卒塾生が自主的にOB会を組織し、お互いに助け合いながら様々な自主活動を積極的に展開して大きな成果を挙げております。そして今では処理業界をリードする、なくてはならないな存在となっております。

 最後に第4の事業は、「適正処理推進事業」ですが、これは5つの事業から成り立っております。
 それは、①PCB廃棄物の適正処理、②不法投棄、不適正処理の支障除去(原状回復)事業、③福島の除去土壌の減容化と再利用を図る組合(VOREWS)の事務局事業、④地域での廃棄物の資源化とそれを核にした地域循環共生圏の構築支援事業、⑤建設汚泥再生品等の再生品認証事業です。
 この内、特にPCB処理事業と不法投棄原状回復事業は、いずれも大規模且つ極めて重要な国家事業でありますが、どちらの事業も様々な課題や障害を克服して、今日まで順調に事業を進めてきております。
 とりわけ、PCBに関しては、高濃度PCBの処理が、また不法投棄対策については、特措法対象の過去の大型事案対策が大きな成果を挙げて、ピークアウトした形で現在終盤戦を迎えております。

 私共財団は、このような事業の推進を通じてこれまでに様々社会貢献をして参りました。
 勿論、今後ともこれら既存事業を更に充実した形で推進を図って参る所存ですが、一方で政府のGX政策、そしてその延長にある「循環経済」や「脱炭素社会」への転換というダイナミズムの中で、それに呼応して私共の役割もステージアップしていく必要があるのではないかと考えております。
 と申しますのも、「循環経済」を形成するにあたっては、廃棄物を資源化、エネルギー化して、それを動脈産業に環流していくこと、即ち廃棄物処理業を素材産業に転換していくことが求められておりますし、「脱炭素社会」を実現するためには、我が国全体の年間CO2排出量12億トンの3%強にあたる約4千万トンもの大量のCO2を排出している廃棄物処理業界として独自のカーボンニュートラル対策を講じる必要があるからです。
 そのために私共は何をしなければならないかを自問自答しながら、私共財団に期待される時代の要請をしっかりと認識し、それに果敢に挑戦して参りたいと職員一同気持ちを新たにしております。

 社会が大きく変化しようとするうねりの中で、私共財団は本年12月に設立30周年を迎えます。
 私共は、これまで以上に全ての関係皆様方と一緒に手を携えて、私共共通の夢であり目的である循環型社会の実現に向けて、一層の努力を傾注して参りたいと決意をしております。
 今後とも関係皆様方のご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

                                                                2022年9月
 

理事長 加藤幸男

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