ご挨拶

廃棄物処理と資源循環のエキスパート集団へ

 当財団は、1992年に国、地方自治体、および産業界の協力により設立され、産業廃棄物処理業界の育成と振興のほか、産業廃棄物の適正処理の推進に努めてまいりました。債務保証事業や助成事業を通じて設備導入や技術向上を支援し、振興事業として経営塾の開催等を通じて経営力強化や人材育成にも取り組んでおります。また、適正処理推進事業により不法投棄による支障の除去やPCB廃棄物の適正処理を支援しています。
 昨今、2050年カーボンニュートラルや資源枯渇の懸念から、サーキュラーエコノミー(循環経済)への流れが世界的に加速している中で、産廃処理業界を取り巻く環境も大きく変わろうとしています。産廃処理業者は廃棄物等を再資源化して製造業等の動脈産業に提供するリソーシング産業へと生まれ変わるパラダイムシフトが起こり始めています。
サーキュラーエコノミーの実現は、持続可能な社会構築に向けて不可欠なアプローチです。政府も「再資源化事業等高度化法」の成立や、「第五次循環基本計画」を国家戦略に位置付けるなど、国をあげた取組強化が図られています。
 一方で、資源循環を実際のビジネスに結び付けていくには、まだまだ多くの課題があります。サーキュラーエコノミーの実現には、バリューチェーンを構成する動静脈連携が必須となりますが、現状は、動脈側・静脈側の双方にとって必要な情報が不足している状況です。また、QCD(Quality・Cost・Delivery)の事業面でも企業が自主的に事業を展開できる経済原則に見合うレベルに達していないのが実状で、実ビジネスに繋げていくための真の障壁、本音の課題を理解し合い、その解決に向けて補完し合う仕組みや政策によるインセンティブ等を必要とする段階であると認識しています。
 こうした認識を踏まえ、当財団の事業内容も時代の要請に応えて変えていかなければなりません。サーキュラーエコノミーの実現に向けて当財団でも次のような検討を進めております。一つ目は、動・静脈双方の企業がビジネスに繋げるための“対話の場”の創出です。障害は何か、どういった情報やサポートが必要なのか等、解決に向けた議論の場を提供していきたいと考えています。もう一つは、全国規模の動静脈連携に必要なマッチングシステムの提供です。当財団の強みである産廃情報ネットの経験とノウハウ、加えて、経営塾OB会や経団連などとのネットワークを活用していきたいと考えています。
 当財団では、新たなビジョンとして「廃棄物処理と資源循環のエキスパート集団へ」を掲げました。我々は、複雑化する不法投棄等の問題にもしっかりと向き合い、加えて、時代の要請であるサーキュラーエコノミーの実現に向けて専門家集団としての役割を果たして参ります。引き続き、当財団の活動へのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

                                                                2024年10月
 

公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団

理事長 寺田正人

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