財団業務のご紹介(情報開示施設審査業務について)
~産業廃棄物処理事業振興財団の資源循環推進のための取組~
はじめに
「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」が本年5月22日に可決、成立しました。この法律案は、資源循環を進めていくため、製造業者等が必要とする質と量の再生材が確実に供給されるよう、再資源化事業等の高度化を促進し、資源循環産業の発展を目指すものとなっています。
製造業者等が必要とする質と量の再生材が確実に供給されるためには、再生品の品質確保、適正な再利用を担保するためのトレーサビリティの確保、再資源化施設と再生品利用側との間の情報連携が不可欠になります(図1)。
産業廃棄物処理事業振興財団では、再生品の品質確保や情報連携を進めるための取組として、再生品認証審査業務(令和3年8月開始)、情報開示施設審査業務(令和5年7月開始)を実施しており、今回はこのうち情報開示施設審査業務についてご紹介致します。
図1 資源循環を進めるために各セクターで想定される役割
1.情報開示施設審査について
1-1 審査の概要
図2 適合マーク
資源化等情報適正開示施設審査(略称「情報開示施設審査」)は、産業廃棄物処理事業振興財団が独立・中立的な第三者として、産業廃棄物処理施設を対象に、資源化や適正処理に関する情報の公開性について審査するもので、産業廃棄物処理施設に資源循環や適正処理に関する詳細情報の開示を促し、排出事業者に有益で適切な処理情報を提供することを基本理念としています。外部専門家を含めた審査チームを構成して書類審査と実地審査を行い、審査基準に適合した施設に適合証・適合マーク(図2)を付与し、適合施設情報を当財団ウェブサイトで公開します。本審査の背景と目的を図3に示します。
図3 情報開示施設審査の背景と目的
1-2 申請者の範囲
審査申請をすることができる事業者は、以下のいずれにも該当する事業者になります。
- 産業廃棄物処分業の許可を有する事業者
- 産業廃棄物処理法第15条の施設設置許可を有する事業者(ただし、産業廃棄物処分業の優良産廃処理業者が産業廃棄物処理法第15条の施設設置許可が不要の施設について申請する場合は、本項目は対象外)
1-3 審査基準、適合証の有効期間と審査料金
審査基準(表1)では、審査対象施設から搬出されるすべての持出先の実名と対応する持出量が示された月毎のマテリアルフロー、施設のエネルギー使用量や施設の稼働状況(写真等)など詳細な情報の自社ウェブサイト等での公開を求めています。また、こうした公開情報の根拠資料について実地審査等で確認します。適合施設でのマテリアルフローの公開例を図4に示します。
適合証・適合マークの有効期間と審査料金は表2に示すとおりで、優良認定事業者やISO等を取得している施設では、一部審査項目を割愛しており審査料金も廉価になります。
表1 審査基準(情報開示施設審査)
項目 |
審査基準(過去1年間分について確認) |
マテリアルフロー |
・減量化量、保管量を含む月毎、年間のマテリアルフロー【要公開】 ・すべての持出先の実名と各々への持出量【要公開】。マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、熱回収、最終処分に向けられたそれぞれの量【要公開】 ・上記を証する電子データ、マニフェスト、契約書等がある ・許可品目以外が搬入された場合の対応記録がある ・持出先(二次搬出先)への現地確認の実施記録、持出先の選定基準がある ・持出先での処理や再生利用状況の確認記録がある |
エネルギー使用量 |
・施設でのエネルギー年間使用量【要公開】 ・上記を証する請求書等がある |
情報開示 |
・CSR報告書、環境報告書等【要公開】 ・施設見学会、近隣等とのリスクコミュニケーション等の実施状況【要公開】 ・施設の稼働状況(適宜の写真情報等)【要公開】 ・情報開示のための社内体制が構築されている |
企業の 取組等 |
・社員教育、法遵守の記録が整備されている【ISO等取得施設は審査対象外】 ・過去5年間に特定不利益処分を受けていない【優良認定事業者は審査対象外】 |
図4 適合施設の公開マテリアルフロー(抜粋)
表2 適合証・適合マークの有効期間と審査料金
有効期間 |
・適合証の交付日から2年間 |
審査料金 |
・40万円/施設(税別、旅費別、ISO等取得施設の場合) ・ISO等未取得施設、非優良認定事業者の場合は、それぞれ10万円高 ・有効期間後の更新申請の場合は20万円/施設(同上) |
2 審査の実施状況
令和6年6月末現在で審査基準に適合した4施設(表3)について適合証を発行し、当財団ウェブサイトで施設毎の月別マテリアルフローやエネルギー利用量等の情報を公開しています。
表3に示した施設はいずれも建設廃棄物の処理施設であり、熱回収を除く再生委託先への搬出率(表3、②/①)に施設間で大きな差はありませんが、エネルギー使用率(表3、③/①)が高い施設ほど、熱回収を除く再生委託先への搬出率が高くなっています。こうした値は、各施設独自の算定値ではなく同じ基準で算定したものであり、排出事業者にとっては処理施設を選択するための一定の評価指標になり得ます。
しかしながら、適合施設数が少ない現段階においては、こうした値を算定することが可能となるマテリアルフローを適切に公開している数少ない施設として、表3に示した施設が排出事業者から評価されるものと考えています。
3 情報公開による効果
産業廃棄物処理施設で情報開示を徹底することは、排出事業者と処理業者の双方にとって有益となります。排出事業者にとっては、情報開示を徹底している処理施設への委託は、適正な処理を行う上で基本的な安心感を得られるし、情報開示により処理の詳細や処理後の流れを知ることは温室効果ガス排出量のScope3でサプライチェーン全体での算定の際に有用になります。一方、処理業者にとっては、処理の詳細を開示している施設として排出事業者にアピールでき、また、融資等を受ける際の企業評価向上に繋がるとの見方もあります。
本審査については、排出事業者や先導的な処理会社の他、行政やご専門の方々から期待の声をいただいており、一層周知を進め、排出事業者に有益な情報を提供していくことで適切な資源循環の推進に資するよう努めて参ります。
表3 適合証を発行した施設一覧(情報開示施設)
所在都道府県 |
適合証番号 日付 |
企業名 施設名称 |
許可品目 |
審査対象期間 |
受入量 ① t/年 |
熱回収を除く再生委託先への搬出量 ② t (②/①%) |
エネルギー 使用量 ③ GJ/年 (③/① GJ/t ) |
埼玉県 |
110001
2023年 7月26日 |
東明興業(株) 所沢工場 http://www.tomei-ems.co.jp/ |
廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類 |
2022年 4月1日 ~ 2023年 3月31日 |
85,032 t |
45,642 t (53.7%) |
11,979 GJ 化石燃料 138.9 kl 電力 656.7 MWh
(0.141 GJ/t) |
千葉県 |
120001
2024年 3月25日 |
高俊興業(株) 市川エコ・プラント https://takatoshi.co.jp/ |
廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類 |
2022年 4月1日 ~ 2023年 3月31日 |
93,900 t |
59,090 t (62.8%) |
61,790 GJ 化石燃料 346.3 t 電力 4,561 MWh
(0.658 GJ/t) |
東京都 |
130001
2023年 7月18日 |
(株)エコワスプラント 日の出リサイクルプラント第一・第二 https://www.ecowasplant.co.jp/ |
廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類 |
2022年 4月1日 ~ 2023年 3月31日 |
25,937 t |
15,360 t (59.2%) |
8,290 GJ 化石燃料 69.7 t 電力 503.9 MWh
(0.320 GJ/t) |
130002
2023年 10月30日 |
高俊興業(株) 東京臨海エコ・プラント https://takatoshi.co.jp/ |
廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類、鉱さい(水銀使用製品産業廃棄物を含む) |
2022年 4月1日 ~ 2023年 3月31日 |
98,648 t |
63,552 t (64.4%) |
82,664 GJ 化石燃料 310.7 t 電力 6,950 MWh
(0.838 GJ/t) |
<問合せ先>
公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団 調査認証チーム 山脇、鈴木
TEL:03-4355-0155 FAX:03-4355-0156 e-mail : saiseihin@sanpainet.or.jp
情報開示施設審査の詳細情報: https://www.sanpainet.or.jp/service104.php?id=36