遠隔ゴミ分別ゲームeスポーツイベント「ECO CATCHER BATTLE 2024」開催報告
ウエノテックス(株)代表取締役社長 上野 光陽氏
図1 遠隔ゴミ分別ゲームeスポーツイベント「ECO CATCHER BATTLE 2024」
2024年11月23日、新潟市のNCC新潟コンピュータ専門学校において、遠隔ゴミ分別ゲームeスポーツイベント「ECO CATCHER BATTLE 2024」を開催しました。このイベントは、廃棄物処理業界が抱える課題である労働力不足解決に向けた新たな試みであり、廃棄物選別とエンターテインメントを融合させた競技型イベントです。
図2 ゲームロボットの説明
本イベントは、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「対内直接投資促進事業補助金」に採択されました。シンガポールを拠点にグローバルな課題解決ゲームプラットフォーム事業を展開するDigital Entertainment Asset Pte.Ltd.(DEA)と、廃棄物処理のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるRita Technology株式会社との共同主催により実施されました。
- Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.(本社:シンガポール)
- Founder & CEO: 吉田 直人
- Founder & Co-CEO: 山田 耕三
- Rita Technology株式会社(本社:東京都新宿区)
- 代表取締役: 上野 光陽
また、公益財団法人産業廃棄物処理業事業振興財団様にもご後援いただき、当日寺田理事長様からの開催のご祝辞もいただきました。
図3 産廃振興財団寺田理事長挨拶
背景―廃棄物処理業の課題と新しい可能性の模索
廃棄物処理業界は、社会の重要なインフラを支える一方で、いくつかの深刻な課題に直面しています。その中でも特に顕著なのが「労働力不足」です。高齢化と人口減少が進む中で、廃棄物処理業務を担う人材の確保がますます難しくなっています。現場作業には高い技術力と体力が求められる一方で、その重要性や魅力が十分に伝わっていないことが、若い世代の関心を引きにくい要因となっています。
また、一般市民へのリサイクル意識の啓発も重要な課題です。廃棄物が適切に処理されるには、市民一人ひとりの協力が欠かせません。特に、リチウムイオン電池入り家電の問題が顕著です。リチウムイオン電池は、廃棄物処理施設やゴミ収集車両での火災事故の原因となっており、その危険性は年々増加しています。しかし、多くの市民は、日常生活で使用する家電にリチウムイオン電池が含まれていることを認識していない場合があります。
さらに、ICTやリモートロボット技術を活用することで、障がい者や海外の方が遠隔地からでも働ける仕組みを整えられる可能性があります。こうした技術の進化は、障がい者雇用の拡大や地域間の労働力格差を埋めるカギになると考えております。
最後に、「遊びながら働く」という新しいスタイルは、厳しい労働環境という廃棄物処理業界の従来のイメージを払拭し、楽しく社会に貢献できる仕事へと変える可能性があるのではと考えております。
こうした課題に応えるべく企画されたのが、「ECO CATCHER BATTLE」です。本イベントは、技術とエンターテインメントを融合させ、廃棄物処理の可能性を広げるための新しい試みとして開催されました。
イベント概要―ゲームとリアルをつなぐ新しい体験
「ECO CATCHER BATTLE」は、参加者がタブレット端末を使い、遠隔地に設置された廃棄物選別ロボット「URANOS」を操作し、廃棄物を分別する競技型イベントです。ゲーム画面上に表示された廃棄物の種類を参加者が判断して選択すると、ロボットがその指示を受け、実際の廃棄物をつかみ取って指定された仕分けエリアに振り分けます。このリアルタイムな連動が、ゲームの楽しさと廃棄物処理の実践的な体験を結びつけています。
図4 ロボット
特に本イベントでは、リチウムイオン電池入り家電の選別が競技の重要なポイントとして組み込まれています。例えば、スマートフォン、モバイルバッテリーなどが対象です。これにより、参加者は「どのような製品にリチウムイオン電池が含まれているのか」を自然に学ぶとともに、その適切な処理の重要性について理解を深めることができます。
図5 獲得ポイント
大会には新潟チーム、長野チーム、フィリピンチームの3チームで競われ、各チームには障がい者、子供、高齢者が各1名を含め5名で構成に行われました。制限時間は1チーム12分で1人ずつ順番にプレイし、分別した廃棄物の数で点数を獲得し、間違えて選別した分はゲーム終了後減点となり、最終のチーム合計スコアを競い合いました。
図6 出場チーム(上:新潟チーム、下左:長野チーム、下右:フィリピンチーム)
大会は、産業廃棄処理企業の直富商事株式会社(長野市)様の社員、家族から構成される長野チーム(チームNAOTOMI)が見事優勝いたしました。廃棄物処理のプロのスピードと正確性を観客の方も感心させられてのではないでしょうか。
図10 優勝シーン
成果と反響―未来への手応えを実感
イベント後には、参加者や観客から次のような声が寄せられました。
障がい者プレイヤーからの声
今回のイベントでは、障がいをお持ちのプレイヤーも参加しました。その中で、
「外に出づらい障がい者が、遠隔で廃棄物選別の仕事ができると考えるとわくわくしてきた」
というコメントが寄せられました。障がい者が遠隔で働ける新しい仕組みの可能性を体感していただけたものと考えています。また、身体的な制約を超えて働ける未来への期待を広げていただく機会となりました。
子供のプレイヤーからの声
「ゲーム感覚で学べて楽しかった。」
というコメントもありました。楽しみながら学べる教育的な取り組み評価いただけたものと思います。このようなプログラムは、次世代の環境意識を育むだけでなく、遊びながら働くことを体感していただけた体感していただけたことと思います。
海外プレイヤーからの声
「海外から遠隔でも働けることが想像できた」
というコメントが寄せられました。海外からの地理的制約を超えて働くことが現実的になる未来への可能性や日本国内の労働力不足を海外労働力(海外プレイヤー)により労働力が解消の出来る可能性を感じていただけたものと思います。
その他観客からの声
「リチウムイオン電池の危険性がよく分かった。日常生活でも分別を意識したい。」
このようなコメントから、リチウムイオン電池入り家電が適切に分別されないことによる火災リスクの深刻さを、多くの参加者に実感していただけたことが分かります。適切な分別が廃棄物処理現場における火災の減少に寄与することを期待しています。
その他にも例えば次の方々からコメントをいただきました。
図11 NSGホールディングス小平勝志様コメント
図12 新潟放送佐藤秀様コメント
図13 新潟県議会議員楡井辰雄様コメント
今後の展望―さらなる発展を目指して
本イベントを基に、今後以下の取り組みを進めていきます。
- 選別対象の拡大
対象廃棄物を増やし、さらに実践的な競技内容へ進化させます。参加者がより多様な廃棄物を認識し、適切な選別スキルを身につけられるよう、新たな要素を加える予定です。
- 廃棄物処理業者対抗の甲子園
会社を超えて選別作業者同士が技術を楽しく競い合う『ECO CATCHER BATTLE-真の選別王』大会の開催を目指します。この大会では、廃棄物処理業界全体の技術向上と連携強化を図り、業界内外の注目を集める場を提供します。
- 教育プログラムの拡充
リチウムイオン電池を含む家電の理解を促進する教育セミナーを開催します。特に、若い世代や家庭でのリサイクル意識向上を目指し、学校教育や地域イベントとの連携も進めていきます。
- 障がい者や高齢者の活躍を支援
今大会の経験を活かし、ゲーム内容や遠隔ロボットの改良を行います。これにより、障がい者や高齢者を含む多様な人材が活躍できる職場環境を早急に実現することを目指します。
- 国際展開の推進
海外の廃棄物処理現場でも活用できるモデルとして、国際的な展開を進めます。ICT技術を活用した遠隔操作モデルを軸に、環境問題解決のためのグローバルな連携を模索します。
- さらなる体験型イベントの拡大
さらに多くの方に『ECO CATCHER BATTLE』を体験していただくため、このたび累計3,000社・20万人以上に体験型イベントや研修を提供してきたIKUSAと提携しました。本提携により、『ECO CATCHER BATTLE』は、IKUSAが展開する100種類以上のサービスメニューの一つとして、日本全国の自治体や商業施設でのeスポーツイベントやレクリエーションコンテンツとして提供されます。
当日のイベントの模様は後日動画配信を開始し、ナレーションにてごみ清掃芸人としても知られるマシンガンズ滝沢秀一さんが担当しました。滝沢さんは清掃業に携わる経験を活かし、廃棄物処理の現場に対する深い理解と独自のユーモアを交えて、イベントの内容をより分かりやすく、そして親しみやすいものに仕上げました。この動画は視聴者からも多くの好評をいただき、イベントの魅力をさらに広げる役割を果たしています。
図14 マシンガンズ滝沢秀一様