2025年春号表紙

センコーグループの動静脈一体物流を活用したハンガーカバーの水平リサイクルプロジェクトへの参加


資源循環促進のための動静脈連携の取組事例として、本号では、テラレムグループ株式会社が、物流大手のセンコーグループのアパレル業界における資源循環プラットフォーム構築に協働・連携した取組をご紹介していただきます。

なお、本記事は、財団が同社を取材した内容を財団の責任で取りまとめたものです。ご多忙のなかご協力をいただき感謝申し上げます。


 

本取組みに至った経緯

 当社グループは、1971年10月に株式会社市川環境エンジニアリング(旧 株式会社市川清掃センター)として設立し、廃棄物の再資源化・燃料化・製品化など様々な資源循環に先駆的に取り組んできました。2017年に純粋持株会社の株式会社市川環境ホールディングス(現:当社)を設立し、グループ創業50周年の2021年には、株式会社クボタと中部電力株式会社の資本参加を得て、さらに2023年4月にグループ名をラテン語の「地球(Terra)」と「修復(Remedium)」の造語「Terrarem」を冠にしたテラレムグループ株式会社へと社名を変更しました。ソリューション事業、資源循環事業、CO2削減事業、施設維持管理事業など、社会的課題や時代のニーズに応え循環型社会の実現を目指しています。

 今回の、ハンガーカバー(アパレル商材の保護用ビニールカバー)の水平リサイクルのお話は、2021年秋頃に、センコー商事株式会社の新規事業開発本部の方からご相談をいただきました。アパレル産業はハンガーのリサイクルに以前から取り組んでいましたが、次の一手として、ハンガーカバーも透明で比較的きれいなのでリサイクルできないか、とアパレル業界から投げ掛けがあったそうです。サプライチェーンの過程で発生する使用済みのハンガーカバーは、汚れや異物の付着が比較的少なく、マテリアルリサイクルに適していますが、発生拠点あたりの排出数量が少ないため、これまでは拠点ごとに焼却やRPF化等のサーマルリカバリー(熱回収)に処理委託されていました。
 広域で少量ずつ発生する廃棄物のリサイクルの成否は、効率的な回収がカギとなります。センコーグループHDがリーダーシップを取り、企業の枠を超えた横断的な仕組みの構築に向けて、アパレル各社、物流会社、当社を含む再資源化企業と協働して、動静脈一体で取り組む廃プラスチック資源循環の実証事業を進めていました。

 当社グループは、洋服のリサイクルの関連として、ハンガー、段ボール、ストレッチフィルム、ウレタンのリサイクルに既に取り組んでおり、機械メーカーから排出されるフィルム類の低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)のリサイクルにも取り組んでいます。センコー商事が洋服メーカーなどから当社のことを聞きつけご連絡をいただいたことを受け、当社としても事業の意義に大いに賛同するものでしたので、CicroMateプロジェクトに参加させていただくことになりました(図1参照)。

1 動静脈一体物流を活用したハンガーカバーの水平リサイクルの事業イメージ

(センコーグループご提供資料)

 

体制と役割分担の模索

マテリアルリサイクルの品質確保のための役割分担等

 デパートやアパレルショップなどの各店舗で発生するハンガーカバーは、効率的な輸送のために動脈物流の帰り便を利用してセンコー株式会社市川ファッションロジスティクスセンター(以下、「センコー市川FLC」)へ運搬し、圧縮した後に当社グループの再資源化工場に運搬してもらっています。

図2 圧縮減容後のハンガーカバー(センコー市川FLC)

(センコーグループご提供資料)

 

 現在はセンコー市川FLCの1か所に、デパートやアパレルショップから集めています。ハンガーカバーはPEリッチであるのに対して、スポーツ用品メーカーから出る保護用ビニールカバーはPPが利用されています。また、回収時にはシールや紙などの付着もあり、回収物は、PEが約7割、PPが約3割ぐらいの割合であり、一部紙も混じっています。

 

 水平リサイクルの実現に向けてPEの割合を高めるため、ハンガーカバーの他に梱包用ストレッチフィルムやエア緩衝材などPEが使われる物流資材も回収の対象に加えました。

 

 最初は回収物の素材別の分別をセンコー市川FLCにてお願いしていましたが、量の増加につれて異物を取り除く負担が大きくなってきたため、現在では、センコー市川FLCでは当社から貸出しているプレス機で圧縮だけ行い、当社グループへ搬入され、選別しています。現在は、フィルムの形状や手触りの堅さで大まかにPEとPPを見分け、PEリッチ、PPリッチとして粗く選別しています。今後、選別の効率アップと品質管理のために、光学選別機を通すことも検討しています。

図3 投入~選別の流れ

(原料投入・解砕・光学式選別:エム・エム・プラスチック株式会社 再資源化工場)

品質確保のための試行錯誤と工夫

トライ&エラーの連続

 2024年夏頃から、回収、選別、リペレット化、フィルム化、製品化(ミシン、タタミ)について試作し、回収会社(回収と選別)の入口から、フィルムメーカーの出口までの間は、試作と品質チェックの試行錯誤の連続です。フィルム化や製品化(ミシン、タタミ)のし易さの改善、膨らみにくい・破け易いなどの不具合への対策など、マテリアルリサイクルテストを続けてきました。

 ハンガーカバーのバージン生産では、異物除去のメッシュスクリーンは、OG品であっても100~120メッシュを用い、目詰まりのために1週間程度で交換しています。これに対して、使用済みハンガーカバーからの水平リサイクルでは、250メッシュで10分毎に交換しています。使用済みハンガーカバーの異物除去がいかに大変か分かっていただけると思います。

 また、機械メーカーから排出されるフィルム類については、LDPEやHDPEを混ぜて強度を出すようなこともしており、今回のハンガーカバーも、フィルムの透明度と引張強度を高めるために、一定量のPPランダムを混ぜています。混ぜる量が多過ぎると、引っ張って切れ易くなるため適切な混合割合が重要で、コンパウンド技術を活かしています。

図4 ペレット化までの流れ

(浮遊選別・乾燥・造粒:エム・エム・プラスチック株式会社 再資源化工場)

再生材の使用割合について

 水平リサイクルによる再生ハンガーカバーは、技術的には、再生材100%でも(フィルム表面に若干ツブツブがあるものの)10μ以下の厚さで製造できることを確認済みです。ただし、実際の再生ハンガーカバーでは、再生材を5~10%使用し、残りはバージン材を使用しています。これは、当初計画で9千トン市場のうち、1千トンを回収目標とした前提に基づき、10%程度の再生材割合としています。

現在のポジションと採算性

 この水平リサイクルの取組の意義について、アパレル各社の回収・選別の協力に理解を得られるよう、協力依頼を続けています。2024年10月頃からようやく本格的に回収が始まり、選別や運搬の最適な方法を模索しながら、これまでに数十トンを回収したところです。

 CicroMateプロジェクトでは、回収されるハンガーカバー等はリサイクル資源として買い取りしています。1千トン回収目標に対して現在の数十トン規模では事業採算が厳しい状況が続きますが、今は事業立上げの正念場で踏ん張りどころです。

水平リサイクルのさらなる拡大にむけて

 本プロジェクトの拡大に向けて、関係者の理解を深め、賛同者を拡げて全国規模での取組に近づくため、デパート・アパレル産業、物流会社、資材研究の3分野に分かれて勉強会を開催しています。
 特に、物流会社の勉強会では、センコー商事が中心となり、物流業界の競合他社が集まって一緒に知恵を出し合い、協力方法について議論しており、関係者の理解を拡げる近道と考えています。

 今後も最適な方法や分担等を模索改良しながら、回収量を増やしていき、2026年に3百トン、2027年に6百トン、2028年に当初回収目標の1千トンに届けば、と考えています。首都圏エリアだけではなく、仙台、名古屋、大阪、福岡などデパートやアパレルショップの路面店の多い主要な都市で回収できるような体制を築いていきます。
 アパレル産業や物流関連の企業の皆様には、同士も競合もなく、業界内で共通する目標に向けて協力し合うことで、業界を挙げた取組に発展できればと願っています。
 関連する皆様には、今後さらに一段のご理解とご協力を賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。

 

※ テラレムグループ関連広報 https://tr-g.co.jp/case-study/724/

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