関連情報
- 1.環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)について」発表
- 2.中央環境審議会「脱炭素型資源循環システム構築に向けた具体的な施策のあり方について」意見具申
- 3.「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」が閣議決定
1.環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)について」発表
環境省では、毎年度、全国の都道府県及び政令市の協力を得て、新たに判明した産業廃棄物の不法投棄及び不適正処理事案の状況、及び年度末時点の残存量等を調査し、公表している。令和5年12月8日に報道発表された「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)について」の概要は、以下のとおりである。
(1) 令和4年度に新たに判明した不法投棄事案
不法投棄の新規判明件数は、ピーク時の平成10年代前半に比べて、大幅に減少しており、一定の成果が見られる。一方で、令和4年度で年間134件、総量4.9万トン(5,000トン以上の大規模事案3件、計1.7万トン含む。)もの悪質な不法投棄が新規に発覚し、いまだ跡を絶たない状況にある。
不法投棄実行者の内訳は、図1(不法投棄件数)及び図2(不法投棄量)のとおりである。
不法投棄件数 134件 (前年度 107件) (前年度比+27件)
不法投棄量 4.9万トン (前年度 2.2万トン) (前年度比+2.7万トン)
(2) 令和4年度に新たに判明した不適正処理事案
不適正処理についても、令和4年度で年間107件、総量2.6万トン(5,000トン以上の大規模事案1件、計0.6万トン含む。)が新規に発覚しており、いまだ撲滅するには至っていない。
不適正処理件数 107件 (前年度 131件) (前年度比-24件)
不適正処理量 2.6万トン (前年度10.9万トン) (前年度比-8.3万トン)
(3)令和4年度末における不法投棄等の残存事案
令和4年度末における不法投棄等の残存事案は2,855件報告され、前年度と比べて件数が増加しているものの、残存量は、平成10年6月16日以前に行われた不法投棄等事案のうち、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)に基づく支障の除去等が令和5年3月末までに完了したことにより、1013.5万トンまで減少した。
残存件数 2,855件 (前年度 2,822件) (前年度比+33件)
残存量 1013.5万トン (前年度1547.1万トン) (前年度比万-533.6トン)
2.中央環境審議会「脱炭素型資源循環システム構築に向けた具体的な施策のあり方について」意見具申
令和6年2月16日、中央環境審議会会長から環境大臣に「脱炭素型資源循環システム構築に向けた具体的な施策のあり方について」意見具申された。以下に、その概要を示す。
1.経緯
この意見具申は、令和4年9月に取りまとめられた循環経済工程表等を踏まえ、中央環境審議会循環型社会部会の「静脈産業の脱炭素型資源循環システム構築に係る小委員会」(令和5年7月から令和6年1月までの計6回開催)において、循環型社会を実現するために必要な静脈産業の脱炭素型資源循環システムを構築するための具体的な施策のあり方について審議が行われてきた結果に基づき、パブリックコメント手続(令和5年12 月19 日から令和6年1月17 日まで実施)や中央環境審議会循環型社会部会への報告(令和6年2月)を経て、取りまとめられてものである。
環境省では、この意見具申を踏まえ、脱炭素型資源循環システムの構築に向けた取組を進めることとしている。
2.内容
以下、意見具申で述べられていることの一部を紹介する。
(1)構成
意見具申は、「I 我が国の資源循環を取り巻く状況と課題認識」、「II 基本的考え方と今後の方向性」、「III 主な施策」及び「IV 今後の課題」から構成されている。
(2)目指すべき脱炭素型資源循環システムのイメージ
目指すべき脱炭素型資源循環システムのイメージは、「II 基本的考え方と今後の方向性」を踏まえると以下のとおりになるとしている。(「III 主な施策」の「(1)脱炭素型資源循環システムについて」
(3)資源循環のパターン
「III 主な施策」の「(1)脱炭素型資源循環システムについて」においては、さらに、資源循環のパターンとして、例えば以下の①~④のような類型が考えられるとしている。これは、上記の脱炭素型資源循環システムのイメージも念頭に置いて、現時点での国内における取組を踏まえると、適正処理を確保した上で、国が特に推進すべきものとして示されてものである。
これを踏まえ、「それぞれの分野に応じたプレイヤーの取組に対して国が認定等を行うことにより、廃棄物処理法に基づく各種手続きの迅速化や、GX の実現に向けた設備導入支援等の各種投資支援策を通じて、脱炭素型の資源循環システムの高度化を進めるべきである。さらに、こうした高度化の担い手として、静脈産業全体の底上げを進めるべきである。」としている。
類型①:企業や業種の垣根を越えて、動脈企業と静脈企業が目標を共有しつつ、素材や物品の性質に応じた循環の輪を形成する動静脈連携を構築するパターン
類型②:地方自治体が、自らの地域の将来や特徴、市民・消費者の生活者としての行動等を踏まえつつ、民間活力も活用しながら、資源循環をリードする官民の連携処理システムを確立するパターン
類型③:廃棄物処理業等において省エネ型の廃棄物処理設備の導入や改修を通じて、静脈産業のカーボンニュートラル化を図るパターン
類型④:高度な分離・再資源化技術を用いて、今後増加する再エネ設備や重要資源の循環利用を行うパターン
(4)情報
「III 主な施策」の「(2)情報活用」では、脱炭素型資源循環システムの構築には、「世界的な気候関連情報のニーズの高まりに加え、欧州における資源循環や人権・環境デューデリジェンスに係る法規制、ISO における資源循環の標準化の議論、循環資源に関する市場整備の必要性を踏まえると、トレーサビリティ確保を含めた情報を通じた主体間の連携が必須である。」と、情報の重要性を強調するとともに、この主体間の連携を進めるために必要と考えられる情報として、①マッチングのための基礎的情報、②バリューチェーン上で求められるより詳細な情報、③パフォーマンス評価のための情報等が示されている。
(5)国際的取組
「III 主な施策」の「(3)国際的取組」では、資源循環の促進や国際的な環境負荷削減、経済安全保障への貢献のため、国際機関や関係国とも連携し、国際的なルールづくりに積極的に貢献していくべきとするとともに、①バーゼル条約e-waste 改正を受けた制度的対応、②日本のリサイクルハブの確立と輸出入の適正化・迅速化といった国際的な取組を進めるべきとしている。
(6)今後の課題
「Ⅳ 今後の課題」として、脱炭素型資源循環システムの構築は急務であり、その実現に向けて、制度的・予算的対応を総合的かつ速やかに講じていくべきであるとし、その対応が実効的なものとなるよう、資源循環の担い手である静脈産業について「質・量両面での資源循環の高度化のために必要な対応の具体化や体制整備、人材確保・人材育成、静脈産業業全体としての底上げに向けた具体策等について検討を深めるとともに、我が国の再生材の市場創出に向けた取り組みについても継続して検討を進めることが重要である」などとしている。
3.「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」が閣議決定
令和6年3月15日、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」が閣議決定され、同日、第213回国会(常会)に提出された。
この法律案の概要は、以下のとおりとされている。(閣議決定に関する報道発表の添付資料(https://www.env.go.jp/press/press_02916.html)のうち「別添1 【概要】資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」)