2026年春号表紙

リチウムイオン電池総合対策パッケージについて

環境省環境再生・資源循環局

廃棄物適正処理推進課長 杉本 留三

1.はじめに

環境省環境再生・資源循環局<br>廃棄物適正処理推進課長<br>杉本 留三氏 環境省環境再生・資源循環局
廃棄物適正処理推進課長
杉本 留三氏

 リチウムイオン電池は、小型で軽量、エネルギー効率が高く、経済性に優れていることから、身の回りの様々な製品に普及している一方で、強い衝撃や高温環境に弱く、それらが理由で発火に至ることがある。近年、収集運搬車両や廃棄物処理施設においてもリチウムイオン電池及びリチウムイオン電池を使用した製品(以下「リチウムイオン電池等」という。)に起因する火災事故等の件数は年々増加傾向にあり、令和6年度には、収集運搬車両や廃棄物処理施設において、発煙・発火を含む全ての火災事故等は23,068件発生しており、そのうち、消火活動が必要となった火災事故等は9,923件発生している(図1)。廃棄物処理施設にて火災事故等が発生すると、修繕費や処理施設停止中の他市町村への処理委託費も含めて、大きな被害損額が生じている。このような火災事故等の原因としては、リチウムイオン電池等が市町村の定める適切な分別区分で排出されず、収集運搬車や廃棄物処理施設の破砕機等で衝撃が加わった際に発火することが挙げられる。火災事故防止のためには、リチウムイオン電池を適切に分別回収する必要があるが、市町村においてリチウムイオン電池等の分別体制を構築している市町村は、令和6年度において約77%となっており、約22%の市町村が、組織体制の整備や人員確保が困難等の理由で、回収体制が構築できていない状況にある(図2)。ついては、各市町村においてリチウムイオン電池等の分別回収及び適正処理をさらに徹底していく必要がある。
 本稿では、環境省がこれまで行ってきたリチウムイオン電池等に起因する火災事故を防止するための取組及び関係省庁において、令和7年12月に策定した「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」について紹介する。

図1火災事故等の発生件数推移(出典:環境省) 図1火災事故等の発生件数推移(出典:環境省)

図2市町村におけるリチウム蓄電池等の回収体制状況(出典:環境省) 図2市町村におけるリチウム蓄電池等の回収体制状況(出典:環境省)

2.これまでのリチウムイオン電池等の適正処理に向けた取組について

 環境省では、市町村におけるリチウムイオン電池等の分別回収及び適正処理を進めていくため、令和7年3月には、「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理のシステムの指針」を改訂し、「リチウム蓄電池やリチウム蓄電池を使用した製品」を1つの標準的な分別区分として追加した。

 また、令和7年4月には、「市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について」の通知を発出し、技術的助言を行った。この通知では、「全ての市町村において、家庭から排出される全てのリチウム蓄電池等の安全な処理体制を構築していく必要がある」とし、リチウムイオン電池等の適正処理に関する方針として、「分別収集区分が分かりやすく排出しやすいなど住民にとって利便性が高い収集方法とすること」、「回収したリチウム蓄電池等の保管を適切に行うこと」、「可能な限り回収したリチウム蓄電池等を国内の適正処理が可能な事業者に引き渡すことで、循環的利用、適正処理を行うこと」を示した。

3.リチウムイオン電池総合対策パッケージについて

 リチウムイオン電池による発火・火災が早急に対応しなければならない社会的な課題となっていること、また、リチウムイオン電池に含まれる有用金属等の再資源化を推進することは、経済安全保障・経済競争力強化にもつながることを踏まえ、関係省庁である消費者庁、総務省消防庁、経済産業省、国土交通省、環境省が緊密に連携して、リチウムイオン電池の火災防止及び再資源化推進に向けた対策を実施するため、令和7年10月に「リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議」を設置した。また、令和7年12月には、この連絡会議にて、関係省庁一体となって、国民や事業者の皆様に対して、リチウムイオン電池に起因する火災の防止や分別回収を働きかけるとともに、「製造・輸入・販売」「使用」「廃棄」「処理・再利用」の各段階で、関係省庁が取組を総動員することを目的に「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」(以下、「本パッケージ」という。)(図3)を取りまとめた。本パッケージには、関係省庁の既存の取組を盛り込むとともに、新たな取組についても下線・太文字として記載している。

 環境省の新たな取組としては、廃棄時の対策として、「他の廃棄物への混入を防止するための廃棄物処理法に基づく制度的対応」、「膨張・変形したリチウムイオン電池の適正処理の方針策定」や、処理・再利用の対策として、「廃棄物処理施設への高度選別機・検知設備の導入支援」、「広域処理のための回収拠点拡大・収集体制の構築支援」を盛り込んでいる。

図3 リチウムイオン電池総合対策パッケージ 図3 リチウムイオン電池総合対策パッケージ

 

 環境省の新たな取組のうち3つの施策について詳しく紹介する。

 「他の廃棄物への混入を防止するための廃棄物処理法に基づく制度的内容」については、廃棄物となったリチウムイオン電池等について、廃棄物処理工程に意図せず混入し、廃棄物処理施設において火災が発生することを防ぐため、収集運搬・保管時の基準の策定や、産業廃棄物の委託契約におけるリチウムイオン電池等の含有の有無の明確にするための仕組みの構築等の廃棄物処理法に基づく制度的対応を行う予定である。

「膨張・変形したリチウムイオン電池の適正処理の方針策定」については、市町村等において、膨張・変形したリチウムイオン電池等は、自然発火の可能性があるため、安全性の観点から回収・保管・処理において取り扱い方法が分からず、対処に難航しているという課題がある。そのため、今後、膨張・変形したリチウムイオン電池等の回収・処理状況についての実態調査、これらを適正に回収・処理している先進的な市町村の事例を収集・周知、安全性の観点から回収・保管・その後の処理体制について検討を行い、安全な処理方法等に関する方針を取りまとめる予定である。

 さらに、「廃棄物処理施設への高度選別機・検知設備の導入支援」については、令和7年度補正予算にて、民間企業が有する廃棄物処理施設等において、混入するリチウムイオン電池等をX線やAI等を活用して高度に選別する設備や、発火を検知し各設備(施設の自動停止、散水等の延焼防止対策、警報発報等)と連携・連動するシステムの導入を支援することとした。これによって、予期せぬ火災事故への強靭化と再生材(主にプラスチック)の質・量の安定供給力確保を推進するとともに、先進的な装置の国際展開を見据えた市場創出等つなげていく。

 その他、本パッケージに記載の取組の概要については、「リチウムイオン電池総合対策パッケージ個別施策集」としてまとめているので、参照いただきたい。

 

本パッケージには、「国民や事業者への周知啓発」について、政府全体ワンボイスでの情報発信することについても記載している。具体的なワンボイスとしては、リチウムイオン電池を扱う際に心がけていただきたい行動として、「賢く選ぶ」(Cool choice)、「丁寧に使う」(Careful use)、「正しく捨てる そして資源循環」(Correct disposal with better recycling)の、頭文字をとって、リチウムイオン電池の「3つのC」をワンボイスとして、関係省庁で連携して呼びかけを実施していく(図4)。

図4 リチウムイオン電池の取り扱いに関するワンボイスでの呼びかけ 図4 リチウムイオン電池の取り扱いに関するワンボイスでの呼びかけ

リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議やリチウムイオン電池総合対策パッケージについては、以下のリチウムイオン電池等に関する特設サイトにて資料等を掲載しているので、ご参考にしていただきたい。

 

リチウムイオン電池等に関する特設サイト(リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議)

4.おわりに

 リチウムイオン電池等を起因とした火災事故が発生した場合、廃棄物処理施設や収集運搬車両への被害に加え、作業員に対しても危害が及ぶ可能性がある。また、廃棄物処理施設が火災事故により稼働を停止した場合、復旧に莫大な費用が生じるとともに、停止している間の廃棄物を他の場所で委託処理する費用も必要となる。さらに、廃棄物の処理が滞れば、地域の生活環境保全上の支障や経済活動の停滞が生じかねないと考えられる。

 こうした事態とならないよう、廃棄物処理施設等におけるリチウム蓄電池等による火災事故の防止やリサイクル推進に向けて、引き続き、自治体や関係省庁、関係業界と協力しながら、対策に取り組んでいく。

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