2025年新春号表紙

特集(全国産業廃棄物担当者会議-基調講演)

産業廃棄物処理行政の現状と今後の方向性

環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長 松田尚之氏 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長 松田尚之氏

(1)はじめに

 戦後、我が国は、責任主体の明確化と廃棄物の処理を行う業や施設の許可制を軸とした必要な法規制と施設整備の支援により、廃棄物の適正処理を確保してきた。このことで分かるように、廃棄物行政の原点は適正処理にある。

 廃棄物処理法では、関係する各主体の役割・責任を明確化し、体系的な規制等を行っている。適正処理の観点からは、排出事業者の処理責任が特に重要である。

 平成29年の法改正により、廃棄物以外の物に対する措置として、有害使用済機器の保管・処分を行う事業者に対する規制が盛り込まれた。

(2)適正処理の推進に向けた取組

 廃棄物処理法に基づく不法投棄事案への対応としては、未然防止策(マニフェスト制度の徹底、不法投棄等の罰則、監視の強化等)と支障の除去(改善命令、措置命令、代執行等)がある。不法投棄等の原状回復措置に関しては、産業廃棄物適正処理推進センターに設けた基金から都道府県等に財政支援する制度がある。盛土による災害防止に向けた取組も始めている。

 最近では、低濃度PCBに汚染された廃棄物の不法投棄事案への対応が、この制度に対する大きな負担になっている。先般、都道府県等に対して、環境再生保全機構のPCB廃棄物処理基金を活用した低濃度PCB廃棄物対策についてご相談をしたところである。

  公共関与の産廃最終処分場に対する支援を行っている。来年度は、必要な支援額が大きい年になっている(財務省からは平準化を求められている)。

 平成29年の廃棄物処理法の改正により有害使用済機器に対する規制が始まったが、規制対象外の金属スクラップ等のスクラップヤードにおいて騒音、火災等の問題が生じている。

令和7年度は、平成29年に改正された規定について施行後5年目の検討の時期に当たるため、実態把握を行うとともに、必要な見直しを行っていきたい。

(3)PCB廃棄物の処理に向けた取組

 高濃度PCB廃棄物はJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)で処理が行われているが、本年5月、PCB廃棄物処理基本計画の変更を閣議決定した。これは、高濃度PCB廃棄物の処理完遂に向けて、北海道事業所(室蘭)の対象エリアに、令和5年度末で処理事業を終了した西日本(北九州・大阪・豊田の各事業所)を追加し、東京と北海道の2か所体制にしたものである。

 低濃度PCB廃棄物は、都道府県等による許可施設及び環境大臣による無害化処理認定施設で処理が行われている。低濃度PCB廃棄物の令和9年3月31日までの処分委託を確実に達成するため、全体的な実態の把握に努めるとともに、処分促進上の課題について、引き続き、検討会等において検討する。

(4)資源循環に関する最近の政策動向

  本年8月2日に閣議決定された第5次循環型社会形成推進基本計画は、「国家戦略」として政府全体で取り組むべき内容となっている。

 資源循環・サーキュラーエコノミーについては、岸田総理にも理解していただき、第1回「循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する関係閣僚会議」が本年7月30日に開催された。こうした政府の方針は、石破総理になっても変わらないものと考えられる。

 資源循環の推進のため、必要な予算も要求している。環境省の機構・定員についても、参事官(資源循環推進担当)の新設を要求している。

私の所属は「廃棄物規制課」であるが、資源循環の推進のため、資源循環産業の支援なども行っていきたい。

(5)太陽光発電設備の大量廃棄に備えた対応

 太陽光パネルの導入が進められているが、使用済みのものの廃棄に関し、地域の懸念が高まっている。

 太陽光パネルの大量廃棄に備えた制度的対応の検討のため、中央環境審議会循環型社会部会に小委員会を設置し、経済産業省の委員会と合同で、検討を開始したところである。

 論点としては、使用済み太陽光パネルの適正処理のための仕組みや費用負担をどうするのか(関係者の役割分担)などがある。

(6)資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律について

 資源循環は、我が国の温室効果ガスの排出量の約36%を占める分野における排出削減に貢献できる可能性があるほか、経済安全保障や地方創生などの社会的課題の解決に貢献でき、あらゆる分野で実現する必要がある。

 また、欧州を中心に世界では、再生材の利用を求める動きが拡大しており、我が国としても、再生材の質と量の確保を通じて資源循環の産業競争力を強化することが重要である。

 こうした状況を踏まえ、製造側が必要とする質と量の再生材が確実に供給されるよう、再資源化の取組を高度化し、資源循環産業の発展を目指す必要があるとの認識から、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」を国会に提出し、本年5月、成立した。

同法では、まず、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための「基本方針」を環境大臣が定めることとしている。

 次に、再資源化の実施を促進するため、廃棄物処分業者の「判断基準」を策定するとともに、処分量の多い(例えば年1万トン以上の)産廃処分業者の再資源化の実施状況を公表するようにした。

 その上で、先進的な取組みを促進するため、3つの類型に該当する事業について、環境大臣による認定制度を創設し、生活環境の保全のための措置を講じさせた上で、廃棄物処理法の特例を措置するという仕組みを作っている。

  3つの類型のうち1番目は「高度再資源化事業」であり、動静脈連携を進めるための制度である。

 2番目の類型は「高度分離・回収事業」であり、廃棄物から高度な技術を用いて有用なものを分離したり回収したりする事業を進めることを目的としたものである。

 3番目の類型は、「再資源化工程の高度化」であり、廃棄物処理施設において再資源化工程の効率化や温室効果ガスの削減に資する設備の導入を進めるためのものである。

 これら3つの類型の認定に関しては、認定のための基準づくりが大事であり、現在、専門家によるワーキンググループにおいて議論していただいているところである。

 また、認定を受けた者に対しては、地方公共団体と連携して監督を実施していきたいと考えている。ご協力をお願いした。

  なお、既に各種のリサイクル法があるが、それらと再資源化事業等高度化法とは、法の目的や措置の範囲が異なるため、原則として共存するものである。

  ただし、高度再資源化事業については、家電リサイクル法により既に処理ツールが確立しているため、適用除外としている。

 最後に、再資源化事業等高度化法に関する今後のスケジュールであるが、基本方針や判断基準の制定など一部を来年2月ごろまでに施行し、認定制度などを11月ごろまでに施行する予定になっている。

 本日お話したとおり、廃棄物をめぐる現在の情勢としては、従来からの適正処理という観点とサーキュラーエコノミーという新たな観点の2つが重要になっている。皆様のご協力も得て、これらを適切に進めたい。ご清聴ありがとうございました。

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