2026年春号表紙

2025大阪・関西万博における「ごみゼロ」の挑戦

総合地球環境学研究所 副所長・教授 浅利美鈴 氏

◆2025大阪・関西万博は、ごみゼロに向けた実験場

総合地球環境学研究所<br>副所長・教授 浅利美鈴 氏 総合地球環境学研究所
副所長・教授 浅利美鈴 氏

 2025年度、特に関西は、2025大阪・関西万博で盛り上がりました。実はこの万博、「持続可能性(SDGs達成)への貢献」を旗印の一つにあげていました。2025年日本国際博覧会持続可能性有識者委員会が設置され、喧々諤々の議論が行われてきました。私も資源循環分野の有識者として参加させて頂いてきました。この元には、資源循環ワーキンググループも設置されました。タフな議論の結果、2022年4月に「持続可能な大阪・関西万博開催にむけた方針」を策定、その中でも重要視している脱炭素・資源循環を中心に、具体的な取組を盛り込んだ「EXPO2025グリーンビジョン」1)が公開されています。
 資源循環分野については、排出量が多いものを挙げ、次のような基本方針を掲げ、具体的な目標数値等も設定していました。
  1. プラスチック対策については、プラスチック資源循環戦略に掲げられた特定プラスチック製品を中心に、ワンウェイプラスチックの削減、容器包装のリユース・リサイクル、バイオマスプラスチックの導入等プラスチック資源循環戦略に掲げられた2030年等の目標を前倒しで目指していく。
  2. 食品ロス対策や食品リサイクル対策は法律に基づいた目標を最低限のものとして、国内の最先端の取組を参考にして、最先端の取組と同等の取組を行う。
  3. 紙については、国内での直近の重要な目標はないものの、デジタル万博を標榜する大阪・関西万博として、国際的な会議、イベントに遜色のないレベルで紙の消費を削減していく。
  4. 施設設備のリユースについては、解体時に分別しやすい建築構造・工法の採用や、建築物の簡素化・軽量化などを進めるとともに、木材等再生可能な資源を利用する。
     

 会場で来場者にも一定浸透していたのは、レジ袋やプラスチックバッグの配布禁止や、マイボトルの活用(ウォーターサーバーやマイボトル洗浄機が設置されていて、大人気!給水機には100人近い列ができていたこともありました)、キッチンカー等でのリユース食器の導入(やや苦戦し、私たちも改善策を提案)、DXも活用した食品ロス削減策などかと思います。また、取組④に関連して注目を集めたのが、「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」です。これは万博会場内で使用される施設・設備・什器の移築・リユース先を、募集・マッチングしようというプロジェクトです。このように、まさに、ごみゼロを目指すリデュース・リユース対策例のオンパレードであったと思います。

 まもなく報告書も公開されますが、実際に、これまでの類似イベントと比べても大きな成果があがっており、今後に向けたレガシーになろうかと思います。どのようにつなぎ、また一般の社会へも波及させていくかが問われることになると思います。

給水機にできた長蛇の列 給水機にできた長蛇の列

 2026年2月13日に、いくつかの論点から振り返り、今後につなげるためのセミナーを実施しました。その録画は次から御覧いただけます。

《EXPO2025グリーン共創事例をレガシーに -資源循環・行動変容の最前線》

https://youtu.be/ZJ5iKK9Drck

《給水がインフラになる日 ~万博、オフィス、大学、地域等における挑戦》

https://youtu.be/ejmnmHhjZnU

◆ベストプラクティスにも選ばれた「ごみゼロ共創ネットワーク」

 関連して、私たちが京都から世界へと、万博で展開した活動も紹介させて頂きたいと思います。

 京都には、「始末の心」や「もったいない」「門掃き」の文化が、息づいています。京都市においては、家庭ごみを、ピーク時から半減以下にするという目標を掲げて取り組み、達成したことはご存じの方もおられるでしょう。そんな京都から、万博を機に、ごみ削減の心や知恵を、世界に発信し、アクションの輪を広げたいと考え、いくつかの取り組みを行ってきました。

 最初にご紹介するのが、「ごみゼロ共創ネットワーク」です。門掃き文化を広げるべく、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの達成を目指すプラットフォームの創出や、活動支援ツール「ごみゼロアプリ」の開発・提供に取り組んでいます。この取り組みは、数ある活動の中から、2025年日本国際博覧会「ベストプラクティス」に選定されました。会期中、会場内とバーチャルパビリオンで発信したほか、イベントなども実施しました。会場外においても、国際交流も兼ねた清掃イベントなどを実施しました。万博を機に、世界に草の根のネットワークを広げるご縁をいただきました。

万博会期中にも、会場に最も近い商業施設ATC(アジア太平洋トレードセンター)にて清掃イベントを実施 万博会期中にも、会場に最も近い商業施設ATC(アジア太平洋トレードセンター)にて清掃イベントを実施

 

 なお、「ごみゼロアプリ」は、清掃活動の可視化・ネットワーク化ツールとして、無償で提供しています。事業所の周辺の清掃活動や、地域の清掃活動へ参加しておられる企業も多いと思いますので、是非、ご活用ください。団体機能などを活用することで、複数の社員の方の各地での清掃活動の成果をまとめたり、清掃活動の予定を告知したりすることもでき、効率的な活動の実施につなげていただけると思います。

ごみゼロアプリの活用イメージ(https://cleanup.project530.com/home

◆ふろしき文化発信

 京都には、物を大切に使う価値観や知恵が根付いています。それを未来や世界につないでいきたいとの思いから、万博において私たちが特に力を入れたものの一つが「ふろしき」の活用です。一枚の布で、運んだり、贈ったり、守ったり、まとったりでき、おしゃれなSDGsグッズとして再注目されています。京都には、ふろしき専門店や、ふろしきをメインで扱う事業者の方も少なからずあり、また、市民ベースのふろしき研究会も存在します。万博においては、関係者が一丸となって取り組みました。

 例えば、4月23日には、EXPOホール(シャインハット)で開催されたEXPO KYOTO Meetingの中で、京テキ・スタイルショーとして、ショーを演出しました。また、8月4日から8月27日には、関西パビリオン京都ゾーンで、「EXPO KYOTO超SDGsみらいラボ」が開設されましたが、その展示品は、全て、ふろしきとのコラボレーションで演出しました。この2週間は、「ふろしきラボ」が常設され、マイスターが、多くの来場者に、ふろしきの使い方のミニレクチャーを行ったり、毎日、ミニショーを実施したりしました。なお、これらの企画には、高校生も多く参画しましたが、ふろしきデビューながら、あっという間に使いこなしている様子が印象的でした。

「EXPO KYOTO超SDGsみらいラボ」でのふろしき展示(https://eco.kyoto-u.ac.jp/sdgs/kyoto-times/7222/

 

 万博会場においては、プラスチック製レジ袋の配布が禁止されていたことは前述の通りです。その対応として、ふろしき活用を推奨する取り組みも行いました。それも、家庭等に眠っているふろしきを回収して、有効利用しようというものです。京都を中心に、全国から寄贈を受けたふろしきを、京都物産出品協会が会期中、常設されたお土産物店「おこしやす 京の小路」において提供していただきました。欧州を中心に検討が進み、日本においても開発が進められているDPP2)の実証にも位置づけ、素材や活用・管理方法、また寄贈者の想いやメッセージ等の情報にアクセスできるようにしました。728枚のふろしきが、この取り組みの中で、次の持ち主の手に渡りました。この取り組みを含む振り返りについても、2026年2月14日のセミナーで取り上げており、その録画は次から御覧いただけます。

《福祉とアップサイクルの共創 ~EXPOで花開いた!》

https://youtu.be/ueopb_-0dXE

◆Mottainai連盟

 「万博ならでは」としてご紹介しておきたいのが、「もったいない」に賛同する国・地域を募った取り組みです。8月の関西パビリオン京都ゾーン「EXPO KYOTO超SDGsみらいラボ」にあわせて、ほぼ全ての出展国・地域のパビリオンを訪問し、「もったいない」というコンセプトや「ごみゼロ共創ネットワーク」の取り組みについて紹介すると同時に、賛同する場合は、Mottainai連盟としてサインしてほしいとお願いしました。限られた期間でしたが、約10の賛同が集まりました。これらの国で「もったいない」に類する言葉を記載頂いたり、ふろしきレッスンをさせていただいたりして、素晴らしい交流になりました。

寄せられた各国の「もったいない」の例と、交流の様子 寄せられた各国の「もったいない」の例と、交流の様子

◆「プラのきもち」ゲーム

 万博会場においても、何度か来場者の方向けに実践したのが、「プラのきもち」ゲームです。プラスチック資源循環を自分事として捉え、意識・行動変容を促すための教育ツールとして、プラスチックの生涯をたどるボードゲームとして開発したものです。バージョン1は、ペットボトルを取り上げており、PETボトル再生樹脂100%のふろしきに仕上げました。消費者向けにDPPを訴求することを目的に、QRコードから、素材や環境・SDGs評価指標、適切な活用や循環のための情報にアクセスすることができるようにもしています。小学生から大人まで、この間、数百人に参加してもらっていますが、大変好評で、手応えを感じています。対話の仕掛けを多く盛り込んでいるため、アンケート調査結果においても、意識変容の効果が実証されつつあります3)

 本ツールは、そのユニークさや先進性が認められ、万博や、万博関連イベントで、何度か体験機会を提供しました。世代を超えて盛り上がっていました。

SDGsジュニアキャンプにてゲーム体験を提供している様子 SDGsジュニアキャンプにてゲーム体験を提供している様子

 

 なお、無償で寄贈していますので、活用いただける方は、次よりお申込みください。

プラのきもちゲーム:https://eco.kyoto-u.ac.jp/sdgs/kyoto-times/6150/

 

このように振り返ると、万博は実に、ごみゼロの実践・実証の場であったと思います。万博とは、学びの場であることが定義づけられていますが、まさに、資源循環についても、国や地域を超えて学びあう場になったと思います。あの刺激的な半年を忘れず、今後につなげていきたいと思っています。

【参考文献】

  1. EXPO 2025 グリーンビジョン:https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/20250326_greenvision.pdf(2026年3月22日確認)
  2. 浅利美鈴:資源循環に向けたデジタルプロダクトパスポート(DPP)とは?、環境管理 Vol.61(5), 8-12(2025.5)
  3. 張馨キ、浅利美鈴:参加型教材「プラのきもちゲーム」の開発と教育的効果の検証、名古屋大学、第36回廃棄物資源循環学会研究発表会(2025)

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