東京都の産業廃棄物施策 ~資源循環の推進に向けて~
1 はじめに
東京都環境局資源循環推進部
産業廃棄物対策課長 東川直史 氏
さて、資源循環と廃棄物処理を取り巻く課題として、国内外で加速する脱炭素化の取組や再生材の利用拡大と利用の義務化、これに向けた動静脈産業の連携に加え、ネイチャーポジティブへの貢献など多岐にわたってきています。こういった動きにしっかり対応していくには、大量生産・大量消費型の資源利用のあり方を見直し、持続可能な形で資源を効率的・循環的に有効利用するという「サーキュラー・エコノミーへの移行」を推進していくことが重要です。
都は、新たな長期戦略である「2050東京戦略」(2025年3月)において、新たな温室効果ガス削減目標を設定していますが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)をはじめとする国際的な動向や、国の「循環型社会形成推進基本計画」(2024年8月)といった国内外の動きとも歩調を合わせつつ、サーキュラー・エコノミーへの移行や廃棄物部門における脱炭素化を強力に推進していくべく、このたび「東京都資源循環・廃棄物処理計画」(2026年3月)を策定・公表いたしました。
本稿では、東京都における資源循環の推進に関する取組について、主に産業廃棄物が関係する部分を概観するとともに、特に建設分野における再生資材の活用促進策として産業廃棄物処理振興財団様と連携して取り組んでいる「連携認証制度」について紹介させていただきます。
2 「東京都資源循環・廃棄物処理計画」の基本的考え方
計画では、2035年の目指すべきビジョンを示したうえで、施策体系の全体像を示しています。
まずビジョンとして、資源の大消費地である東京の責務として、CO2排出実質ゼロにも貢献する持続可能な資源利用に向けた取組をサプライチェーン全体で推進し、サーキュラー・エコノミーへの移行促進を図るとともに、社会課題に的確に対応する資源循環・廃棄物処理システムの安定的な基盤の確保を目指していくこととしました。
次に、施策体系の全体像としては、計画を支える3つの柱と10の施策領域を設定し、今後、都が展開する施策強化の方向性を提示しています。
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3つの柱 |
施策領域 |
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① 資源ロス削減と循環利用の強化・徹底 |
領域1 重点対策分野における包括的な資源循環施策の展開 |
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領域2 2R(リデュース・リユース)を基調としたライフスタイルへの転換 |
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領域3 廃棄物の循環利用の更なる促進 |
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② 持続可能な資源利用の実現に向けた社会変革の加速 |
領域4 資源循環の機運醸成と時代に対応した新たな仕組みづくり |
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領域5 多様な主体との連携・協働の促進 |
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領域6 持続可能な資源利用の主流化 |
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③ 社会課題に対応した強靭で安定的な廃棄物処理システムの確保 |
領域7 社会構造の変化に対応した廃棄物処理システムの更なる充実・強化 |
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領域8 資源循環・廃棄物処理の基盤を成す適正処理の確実な遂行 |
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領域9 災害廃棄物対策の一層の推進 |
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領域10 廃棄物処理システムの脱炭素化とシナジー施策の展開 |
各取組等においては、さらに取組指標などを設定するとともに、取組の加速・進展に向けたPDCAサイクルを実施し、施策をアップデートしていきます。詳しくは、東京都環境局のサイトを参照ください。 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/basic/plan/resource/waste_treatment/
3 分野別施策の展開
都内における排出事業者の多くは、自らの産業廃棄物を処理業者等に委託して処理しています。排出事業者が委託後の処理状況を十分に確認しないことが原因で産業廃棄物が不適正に処理されている事例が後を絶たないことから、都は、産業廃棄物の排出抑制と適正処理を徹底すべく、産業廃棄物の減量や適正処理の取組状況の報告・公表を排出事業者に対して義務付けるなど、独自の取組を展開してきました。また、都市部の事業活動の特徴として多種多様な主体が存在することから、地元区市町村との連携や事業者団体との協働を通じて、施策の効率的な実施やその実効性向上等を図ってきました。さらに、都内で排出された産業廃棄物が近隣県を始め広域的に処理されていることもあって、近隣自治体との相互の情報交換、連携、協力体制を構築して、産業廃棄物の不適正処理の抑制や、万一の不適正処理発生後の迅速対応を図ってきました。
今後は、以上の取組に加え、脱炭素化や産業競争力の強化にもつながるサーキュラー・エコノミーへの移行に向けて、デジタル技術の活用やサプライチェーン全体での循環利用や行動変容、動静脈産業といった更なる事業者間連携を進めていきます。また、プラスチック・食品ロス対策といった脱炭素化にも貢献する事業に取り組むことで、持続可能な資源利用を目指していきます。
(1)サーキュラー・エコノミーの推進
都は、これまで循環型社会を構築する観点から様々な取組を進めてきましたが、今後、さらに取組を加速させるためには、都民・事業者団体、自治体等による連携を図りながら、サーキュラー・エコノミーの実現に向けた具体的な取組への支援等を行っていくことが重要です。
都は、2022(令和2)年、公益財団法人東京都環境公社とサーキュラー・エコノミーの推進について、都内における持続可能な資源利用の実現に向けた取組を連携して実施していくための協定を締結しています。これを受け、東京サーキュラー・エコノミー推進センター(公益財団法人東京都環境公社が2022年に設置)では、持続可能な資源利用に関する情報発信やシンポジウムの開催、都内の事業者・自治体等への相談・マッチング、また地域密着型のサーキュラー・エコノミーの実現を目指す取組等への支援を実施しています。
(2)プラスチック対策
都は、「プラスチック削減プログラム」(2019年12月)を策定し、先進的な事業者等と連携した2R・水平リサイクルに関する新たなビジネスモデルの創出支援、自治体による家庭のプラスチックの分別収集・リサイクルの促進等の取組を展開しています。プラスチック資源循環法の施行もあって、都内のプラスチック資源循環の取組は着実に進展を見せていましたが、コロナ禍への対処などもあって、プラスチック焼却量は横ばいの状況にあります。
そこで、都では、リユース容器や量り売り・シェアリングなどの2Rビジネスや革新的技術による水平リサイクルの社会実装・事業拡大に取り組む事業者を支援するため、2024(令和6)年度から補助事業として「サーキュラー・エコノミーへの移行推進」を立ち上げ、持続可能なプラスチック利用を実現する新たなビジネスモデルの実装促進を目指しています。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/single_use_plastics/circular_innovation
(3)建設廃棄物・建設資材の循環
都内では高度経済成長期に建築された建物やインフレが更新時期を迎えており、それに伴って生じる建設廃棄物は、今後大量発生が見込まれています。2002(平成14)年に完全施行された「建設リサイクル法」は、建設廃棄物の減量と再資源化を促進するため、建設工事の受注者に対し、分別解体と特定建設資材(コンクリート、コンクリート及び鉄からなる建設資材、アスファルト・コンクリート、木材)の再資源化を義務付けています。分別解体に係る事務は東京都都市整備局、特別区及び建築主事設置市の建築行政担当部署が担当し、再資源化に係る事務を東京都環境局が担当しています。
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/ryokuchi_keikan/shoshigen/recy
建設再生材の利用促進には、品質や安全性に対する不安解消に向けた情報の提供や、再生材を安心して使ってもらえる仕組みの構築が不可欠です。このための取組を以下に2つ紹介します。
① 担当者向けの研修動画の作成
建設工事に係る資材の再資源化を促進するための取組の1つとして、サーキュラー・エコノミーを実践する意義、取組効果等について、第一線の有識者にご協力いただき、排出事業者や産業廃棄物処理業者を対象とした研修動画を作成しました。排出事業者の環境部門の担当者や産業廃棄物処理業者の経営層の皆様におかれては、本研修動画を社内研修などで是非ご活用ください。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/training_video
②建設再生材の活用促進に向けた認証支援
産業廃棄物処理事業振興財団では、再生品の適切な利用を進めるための取組の一つとして、2021(令和3)年より建設汚泥再生品等の有価物該当性認証審査業務(以下、「再生品認証業務」という)を実施しています。今も、多くの関係の方々からお問合せやご相談を頂いていると聞いておりますが、都のサーキュラー・エコノミーの移行を加速させていくには、一層の取組が必要です。
そこで、都は、産業廃棄物処理事業振興財団及び東京都環境公社と三者協定を締結し、建設再生材の認証制度の活用促進事業を実施しています。
本事業では、都の「優良性基準適合認定事業」で認定を受けた事業者からの申請があった場合に、コーディネーターを派遣して再生材の利活用や認証取得、トレーサビリティ等に関する助言を行い、産業廃棄物処理事業振興財団が有価物該当性の審査を行っています。
また都は、コーディネーターを派遣するだけでなく、都の検討(審査業務の合理化やトレーサビリティの仕組みの構築等)へ協力下さる申請者には審査料の一部を支援しています。
他にも協定を締結した3者においては、建設再生材に係る普及啓発に向けて様々な情報発信や協力を行っています。ご興味のある方は気軽に各窓口に相談ください。
東京都環境局
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/construction_waste
産業廃棄物処理事業振興財団
https://www.sanpainet.or.jp/service03.php?id=43
東京都環境公社(優良性基準適合認定事業)
(4)リチウムイオン電池の対策
身近な充電式機器類に内蔵されている小型のリチウムイオン電池は、廃棄物の収集運搬や中間処理時において、この電池が原因と思われる発火事故が都内をはじめ全国で発生しています。
このため、都では、排出事業者等を対象としたリチウムイオン電池の分別や適正処理に係る掲示物の作成や、区市町村、事業者団体等とも連携した普及啓発活動を行っています。2024(令和6)年度からは「リチウムイオン電池 混ぜて捨てちゃダメ!プロジェクト」を開始し、区市町村や業界団体等とも連携して注意喚起を強化するとともに、複数自治体を広域的に調整し、回収・資源化を行う「広域的資源化モデル事業」に取り組んでいます。
今後は、これまでの取組を通じ、さらなる意識向上を図るほか、処理過程での電池の混入実態等を踏まえた、分別回収から保管・運搬・処理における実効性の高い安全対策の普及を後押ししていきます。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/battery
4 おわりに
サーキュラー・エコノミーへの移行には、処理業者だけでなく静脈産業側の事業者での果たす役割が増大しています。リサイクルの高度化や温室効果ガスの削減、トレーサビリティの明確化といったニーズへの対応には、DX推進による廃棄物処理過程の合理化や高度化を図っていくことが重要です。他にも、まだ食べられるにも関わらず、捨てられてしまう食品、いわゆる食品ロスの対策として、都は「食品ロス削減推進法」に基づいた計画を立て、企業、消費者、行政が協力して様々な対策を進めています。
こういった取組を進めるうえで、本文中でも述べた、建設再生材の活用促進に向けた連携認証制度は、行政と民間が協働して市場を形成する好例であり、今後の資源循環政策のモデルとなり得ると考えています。
引き続き、都は、都市特有の課題の解決に向け、先進的な取組を展開していくべく、様々な事業に取り組んでいきます。皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。


