2026年夏号表紙

川上産業株式会社 エコリアルボード(ER board)原料に当社容リ材の提供・連携

~プラスチック資源循環を巡る需給構造の転換と動静脈連携の重要性~

株式会社富山環境整備

 


本号では、資源循環の促進に向けた動静脈連携の取組事例として、株式会社富山環境整備が製造している容リ材(PCR材)を、川上産業株式会社のプラスチック段ボール(ER board『エコリアルボード』)の原料として提供・連携した取組を紹介いたします。 なお、本記事は、株式会社富山環境整備の社長室専任次長の今井麻美様より、動静脈連携の取組に加えて、PCR材の品質の高度化や利用拡大に向けた「GOMIKARA」の取組等についてもご紹介いただきました。ご多忙のなかご協力を賜りましたことに心より感謝申し上げます。


 

プラスチック資源循環における課題と動静脈連携の必要性

 株式会社富山環境整備(以下、当社)は、容器包装リサイクル法が完全施行された2000年にプラスチックリサイクル事業を開始して以来、使用済容器包装プラスチックを中心とした再資源化から再生樹脂(本稿では、容器包装プラスチック由来の再生樹脂を指し、以下「容リ材」という。)製造、製品化までの一貫したリサイクルシステムを構築し、資源循環の一役を担ってきました。また、大学や公的研究機関、樹脂メーカーとの共同研究・技術開発にも積極的に参画し、容リ材の品質向上および用途開発を推進、製造・品質管理・利用に関する知見をこれまで蓄積してきました。
 近年、脱炭素や資源制約の進展により、容リ材は単なる代替素材としての評価にとどまらず、品質や価格といった従来の要素に加え、どのような循環構造の中で生産・利用されているかという調達の判断基準そのものが変化しつつあります。また、国際情勢や為替変動の影響を受けやすい海外石油由来資源と比較して、容リ材は、国内で循環する「安定経済資源」としての可能性を有しており、資源の安定調達と循環型社会の実現を両立する基盤として、持続可能なものづくりを支える重要な資源として期待されています。一方、これまでの取り組みを通じて、用途拡大のためには、安定した供給量の確保と品質の維持の両立が不可欠であることが明らかとなってきました。当社はこうした認識のもと、利用拡大と品質向上、国内循環の実現に向けて、さまざまな企業との連携を行ってきました。
 

選別施設 選別施設

洗浄施設 洗浄施設

造粒施設 造粒施設

図1 ㈱富山環境整備 プラスチックリサイクル施設

資源循環実装に向けた独自ブランド「GOMIKARA」を立ち上げたきっかけ

 国内におけるプラスチック資源循環は供給側の努力のみで実現できるものではなく、静脈側が高品質な容リ材を供給したとしても、需要側(動脈)による積極的な利用意思や、その先の生活者・企業の選択が伴わなければ循環は成立しません。そのため当社では、容リ材の価値を共有し、循環を「見える化」することで、「使いたい」と共感する企業や生活者を増やしていくことが重要だと考えました。
 それを実現した具体的な取組例として、大阪和田化学工業株式会社と共同で開始したごみ袋の地域循環スキームを紹介します。本スキームは、プラスチック資源循環促進法第33条を活用し、生活者が分別排出したプラスチック資源を自治体が回収し、当社で再資源化および再生樹脂を製造します。その原料を用いてごみ袋を製造し、排出元の自治体へ供給するという仕組みです。
 従来から薄物製品にも比較的品質の安定したPIR材は広く使用されてきましたが、家庭から回収されるPCR材(本稿では容リ材を指す)は異物混入などの課題により製品への適用が困難とされてきました。そのような状況の中で、今回、品質の高度化に加え、製造技術開発およびメーカーとの連携によりこれらの課題を克服し、容リ材を活用した製品の開発・実用化に成功、地域内資源循環を実現しました。
 

 本製品は、生活者が自ら排出した資源が再び製品として地域に戻る循環を実感できる点が特徴であり、自治体からも一定の支持を得ています。資源循環の流れを見える化するツールとして、自治体指定ごみ袋や清掃ボランティア用袋などへの採用も広がりつつあります。従来のリサイクルを前提とした発想から、制度を活用して自治体・生活者・リサイクル事業者と製造事業者が連携した国内でも数少ない実装事例であると考えています。この取組を通じて当社は、容リ材の価値は単なる素材機能にとどまらず、資源循環を社会全体で捉える必要性を強く感じました。
 この考えのもと、当社は2025年に資源循環の社会実装を繋ぐためのプロジェクト「GOMIKARA」※1を立ち上げました。GOMIKARAは、容リ材の循環を見える化し、その価値を社会に発信することで、生活者・自治体・静脈産業・動脈産業・製品価値・社会システムという6つの要素を接続するために構想したプロジェクトであり、”循環のハブ”としても位置付けています。
 このGOMIKARAの理念や取り組みに共感し、新たな価値創出に向けて協業を進めることとなった企業の一つが川上産業株式会社です。同社は包装資材分野において再生材の活用に取り組む企業であり、当社が目指す「容リ材を製品として成立させる」という考え方とも共通点を有していました。2025年秋頃、GOMIKARAを通じた情報交換をきっかけに両社の対話が始まりました。その中で、これまで主にPIR材が使用されてきた製品への容リ材活用の可能性について意見が交わされ、新たな資源循環モデルの実装に向けた検討がスタートしました。

図2 GOMIKARAを立ち上げるきっかけとなったリサイクルごみ袋 図2 GOMIKARAを立ち上げるきっかけとなったリサイクルごみ袋

図3 GOMIKARA資源循環スキーム 図3 GOMIKARA資源循環スキーム

川上産業との連携 容リ材の高付加価値利用

 川上産業株式会社は、梱包などに使われる気泡緩衝材「プチプチ」※2を中心とした包装資材の製造・販売を行う企業で、物流・包装分野における環境配慮型製品の開発に積極的に取り組んでいます。早くから再生材に着目し、現在では製品の90%以上に使用するなど、機能性と環境負荷低減の両立を実現しています。また、資源循環型製品の開発にも積極的な姿勢を示しており、安定供給と用途拡大という観点からも、動静脈連携の具体化に向けた当社の重要なパートナーであると考えています。
 川上産業と当社は、使用済みプラスチックを単なるリサイクル資源として扱うのではなく、新たな製品価値を生み出しながら資源循環を実現していくという考え方を共有しています。本取り組みを象徴するキャッチフレーズとして、「資源の終わりを、製品の始まりに」という言葉が川上産業から提案されました。このフレーズは、使用済み資源が新たな価値を持つ製品へと生まれ変わる資源循環の本質を端的に表現するものとして、両社でも共感を得ており、今後のPR活動においても活用していく予定です。
 

川上産業製品エコリアルボードの実装

 プラスチック製ボード「エコリアルボード(ERボード)」※3は、2023年に開発された同社の主力製品です。再生PP100%を原料として、繰り返し利用が可能な設計となっており、ライフサイクル全体で高い環境性能を有しています。
同社の製品は、これまで主にPIR材を活用してきましたが、容リ材の特徴を活かした新たな原料活用の可能性に着目し、本取り組みに向けた検討がスタートしました。
 検討の過程において、同社は当社のPP・PE再生ペレットを評価しました。その結果、従来評価されてきたものよりも異物混入が少なく、灰分および水分含有量も非常に低いことが確認されましたが、ERボードの成形は、臭気、表面性、加工性において、容易ではありませんでした。
 こうした課題に対し、同社と研究および試作を重ねた結果、多層構造とすることで、独自の配合設計を確立、課題を克服し、安定した成形性を確保することが可能となりました。これは、業界内で困難とされてきた高付加価値製品への適用を実現した事例であり、当社にとって資源循環の高度化と新たな価値創出の可能性を示す取り組みとなりました。
 また、PE物性については気泡緩衝材(プチプチ)用途への適用可能性が高いと見込まれており、押出シート成形やインフレーション成形においても良好な成形性が確認されています。容リ材特有の色調を活かした製品展開も可能であると評価されており、同社は将来的には軽量パレットや物流用ボックスなど、より広範な用途への展開も視野に入れています。
 現在は、安定的な量産・供給体制の構築に向けて、物性評価および品質基準について双方での相互評価を進め、実用化に向けた検討を進めています。

図4 川上産業株式会社『エコリアルボード』カタログ 図4 川上産業株式会社『エコリアルボード』カタログ

図5 エコリアルボード 容器包装リサイクルタイプ試作品 図5 エコリアルボード 容器包装リサイクルタイプ試作品

将来展望 GOMIKARA が目指す社会~当たり前の中にサステナブルをつくる~

 環境問題への関心の高まりにより、分別やリサイクルの重要性が広く語られるようになりました。しかし、見える化によって行動が変わるのは、どうしても意識の高い一部の人々に限られがちです。分別意識の向上がそのまま環境配慮製品の購入に繋がるかといえば、現実にはそう単純なものではなく、環境意識と消費行動の間には依然として大きな隔たりが存在していると感じています。
 当社が取り組むGOMIKARAは、単なる“見える化”や「環境に良いから選ぶ」といった特別な行動を前提とするものではありません。目指すのは、「選んだ製品が、結果として環境に良い製品であった」という選択が生活の中で自然に受け入れられる社会です。そして、その実現の先にあるのは、環境配慮が特別な意識や努力を必要とせず、「生活の当たり前」として根づく社会です。
 それこそが、生活者の気付きのきっかけとなり、自治体にとっては施策改善に役立ち、企業にとっては製品価値を証明する材料となります。当社は、この取り組みを単なる素材循環の高度化や製品・サービスの提供にとどめることなく、価値・情報・行動変容までを包含した生活者参加型のプロジェクトへと進化させ、資源循環の社会標準となる未来の実現を目指していきたいと考えています。
 

※1 「GOMIKARA」は当社が商標登録出願中の名称です。

※2、※3 「プチプチ」及び「エコリアルボード」(ERボード)は川上産業株式会社の登録商標です。

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