連携が広げる資源循環 ~DOWAグループの動静脈連携~
DOWAエコシステム株式会社
環境ソリューション室 室長 吉村 雅仁氏
本号では、資源循環の促進に向けた動静脈連携の取組事例として、DOWAグループが電子部品メーカー等と連携し、製造工程から発生する金属含有廃棄物を回収・再資源化し、素材製造から再供給までをグループ内で完結させ、資源を再び原料として活用する循環を実現した取組を紹介します。
なお、本記事は、DOWAエコシステム株式会社環境ソリューション室長の吉村雅仁様にご執筆いただき、動静脈連携の取組に加え、第三者検証を受けた非鉄金属製品の提供など、再生材の環境価値の見える化についてもご紹介いただきました。ご多忙のなかご協力を賜りましたことに心より感謝申し上げます。
1.DOWAグループの資源循環事業
[5つの事業が連携する循環型ビジネスモデル]
DOWAグループは、非鉄金属製錬を起点に、環境・リサイクル(DOWAエコシステム(株))、製錬(DOWAメタルマイン(株))、電子材料(DOWAエレクトロニクス(株))、金属加工(DOWAメタルテック(株))、熱処理(DOWAサーモテック(株))の5つの事業を展開しています。各事業が持つ技術や機能を連携させ、資源の回収・選別、再資源化から、素材・製品の供給までを一体的に担う循環型ビジネスモデルを構築しています。
近年は、こうした事業基盤を活かし、企業との連携による資源循環の仕組みづくりにも力を入れています。また、資源そのものの循環に加え、資源や廃棄物に関するトレーサビリティ情報や環境価値情報を関係企業間で共有・連携することで、その価値化と循環の高度化を進めています。
DOWAグループの循環型ビジネスモデル
環境・リサイクル、製錬、電子材料、金属加工、熱処理の5つの事業が連携し、動脈産業と静脈産業の双方の機能を併せ持つ事業基盤を強みとしています。
[鉱山で培った技術を都市鉱山へ、さらに都市鉱山の可能性を広げる]
こうした資源循環事業の基盤は、祖業である鉱山・製錬事業の中で形成されてきました。複数の有価金属を含む鉱石である「黒鉱」から金・銀・銅・鉛・亜鉛などを分離・回収する製錬技術は、現在、DOWAグループが主要な製錬原料として取り扱う、使用済み電子基板などのいわゆる「都市鉱山」から多様な金属を回収するリサイクル技術へと受け継がれています。都市鉱山から複数の金属を効率的に回収することは、資源循環と経済性の両立において重要な役割を果たしています。
また、DOWAエコシステムが担う前処理機能の強化により、多様化・低品位化が進むリサイクル原料にも対応できるようになっています。環境・リサイクル(DOWAエコシステム)と製錬(DOWAメタルマイン)が連携することで、製錬で取り扱う原料の幅を広げ、都市鉱山として活用できる資源の拡大を進めています。
黒鉱
使用済み電子基板
鉱山資源から都市鉱山資源へ
黒鉱で培った分離・回収技術を、使用済み電子基板などのリサイクル原料へ展開
[資源循環を支える適正処理]
また、資源循環は、回収した資源を再び素材として活用することだけで成り立つものではありません。回収された資源の中には、技術面や経済面の制約から再資源化が難しいものも存在します。資源として活用できるものを最大限循環させる一方で、再資源化が難しいものや有害性が高いものを焼却処理や最終処分などにより安全かつ適正に管理することも、資源循環を支える重要な役割です。今後、資源循環の進展に伴い、再資源化が難しいものへの対応も増加することから、その受け皿となる処理機能の重要性は今後一層高まると考えています。
廃棄物の焼却処理施設(ロータリーキルン式焼却炉)
有害性や危険性等を有するような再資源化が難しい廃棄物を焼却処理によって無害化・減容化を行う。
廃棄物の管理型最終処分場
焼却残渣等を埋立処分し適正に管理を行う。
2.企業連携による新たな資源循環の仕組み
こうした技術や事業基盤を活かして資源循環をさらに広げていくためには、製品を製造し、使用し、再生された素材を再び活用する側との連携が欠かせません。回収された資源が再び素材や製品として利用されるためには、それぞれの企業が持つ技術や機能をつなぎ、循環が継続する仕組みを形成する必要があります。
DOWAグループでは、グループ内の各事業が連携するとともに、社外の企業ともそれぞれの技術や機能を活かしながら、新たな資源循環の仕組みづくりを進めています。ここでは、顧客企業との具体的な資源循環、そして異なる強みや機能を補完し合う企業との連携を通じた今後の展開を紹介します。
[上流企業との連携(国内大手電子部品メーカーとの資源循環スキーム)]
電子部品メーカーとの連携では、当該会社の製造工程から発生する金属を含む工程廃棄物をDOWAエコシステムが回収し、DOWAグループの製錬機能で金属原料に再生した後、DOWAエレクトロニクスが電子材料へ加工し、再びリサイクル素材として当該会社に供給する資源循環スキームを構築しました。回収から再資源化、素材製造、再供給までをDOWAグループ内の機能でつなぎ、製造工程から生じた資源を再び製品の原料として活用する循環を実現したものです。
DOWAの目指す資源循環の仕組み
この取り組みでは、工程廃棄物の回収と素材製品の供給を一つの循環として捉え、回収量から製品の販売量までを厳格に管理することで、取引の流れを可視化しました。資源を循環させるだけでなく、その循環を継続的に管理し、再生された資源の価値を関係企業間で共有できる仕組みとした点が特徴です。また、環境面での付加価値についても顧客企業から評価を得ることができました。
資源循環の仕組みを構築するためには、回収・製錬を担う静脈側と、素材・製品を製造する動脈側が、対象となる資源、品質、必要量、管理方法などについて共通認識を持つことが重要です。本事例では、顧客企業とDOWAグループの関係部門が連携し、それぞれの既存機能や取引をつなぎ直すことで、継続可能な循環の形を整えました。
DOWAグループでは、本事例で得た知見を活かし、貴金属やベースメタルなど対象素材の拡大を進めるとともに、電子部品分野に加え、半導体や自動車をはじめとする幅広い製造業との連携を検討しています。各社の製造工程や製品特性に応じて、回収、再資源化、素材供給を組み合わせ、資源循環と事業性を両立する仕組みを提案していきます。
[役割を補完する連携(大手アルミニウムメーカーグループとの戦略的パートナーシップ)]
大手アルミニウムメーカーグループとの連携では、それぞれが強みを持つ金属領域を相互に補完することを目的として、金属リサイクル分野における戦略的パートナーシップを締結し、リチウムイオンバッテリー・太陽光パネル・EVモーター等の金属リサイクルにおける共同技術開発・事業開発を進めています。
3.情報連携で広がる動静脈連携
これまで見てきたようなモノの連携に加え、資源や廃棄物に関する情報も企業間でつながることで、動静脈連携の可能性はさらに広がります。再生材の利用拡大には、資源が循環していることに加えて、その環境価値を見える化し、需要家に正しく伝えることが欠かせません。由来や品質、CO₂削減効果などの情報を共有することで、再生材の価値が適切に評価され、さらなる資源循環の促進につながります。ここでは、DOWAグループが取り組む二つの事例を紹介します。
3-1.再生材であることを見える形に
資源循環を広げていくためには、再生された素材を供給するだけでなく、再生材を使用しているという価値を、利用する企業まで確かにつないでいくことも重要です。DOWAグループでは、リサイクル材料含有率について第三者検証を受けた非鉄金属製品を提供し、再生材の環境価値の見える化を進めています。
リサイクル材料含有率について第三者検証を受けたDOWAグループの非鉄金属製品
3-2.廃棄物処理に伴うGHG排出量を可視化する
廃棄物の排出事業者は、マニフェスト制度により委託した廃棄物の処理状況を確認することができます。一方で、その処理過程でどの程度のGHGが実際に排出されたのかを把握することは容易ではありません。近年、企業のGHG排出量開示においては、Scope3算定の精度向上や信頼性の高い一次データの活用が求められており、廃棄物処理に伴う排出量(カテゴリ5)についても、より実態に即した把握が重要になっています。DOWAエコシステムでは、処理段階における環境負荷を可視化するため、委託いただいた廃棄物処理に伴うGHG排出量を、実際の処理プロセスデータを用いて顧客ごとに算定・報告する取り組みを進めています。なお、算定手法については第三者による妥当性確認を受けることで算定結果の信頼性確保を図っています。
廃棄物処理プロセスのCFP算定・報告
実際の処理データに基づき、顧客に委託いただいた廃棄物処理に伴うGHG排出量を算定・報告します。
CFP算定報告書の例
廃棄物の運搬、処理、副資材の使用、最終処分など、工程ごとのGHG排出量を可視化します。
4.今後に向けて
[連携を通じて資源循環を広げる]
資源循環は、リサイクルを担う企業だけで実現できるものではありません。回収・分解しやすい製品設計を考えること、再生された素材に求める品質を明らかにすること、回収した資源を再び製品に利用することなど、動脈側と静脈側がそれぞれの役割を果たしながら連携していく必要があります。また、再生材の利用拡大に向けては、資源の流れに加えて、その由来や環境価値に関する情報を共有し、適切に評価していくことも重要です。DOWAグループでは、今回紹介した取り組みのように、モノと情報の両面で各社が技術や知見を持ち寄り、回収された資源が再び素材として利用される仕組みを一つずつ形にしていきたいと考えています。


