建設リサイクルの現状と課題
1. はじめに
京都大学大学院地球環境学堂教授
勝見 武 氏
2. 建設リサイクルとその現状把握
建設工事では、工事に伴ってコンクリート塊やアスファルト・コンクリート塊、建設汚泥、建設発生土などが発生し、これらを建設副産物とよんでいます。また、建設副産物のうち産業廃棄物に分類されるものは建設廃棄物とよばれ、処理にあたっては廃棄物に関する法令に従って取り扱う必要があります。具体的には、コンクリート塊、建設汚泥、建設発生木材、建設混合廃棄物などは建設廃棄物ですが、建設発生土は廃棄物ではありません。また、建設発生土と建設汚泥をあわせて発生土といっています。
建設副産物は発生量が膨大ですが、それは建設工事の規模が大きいからでもあります。小さな建設現場でも掘削を行えば相当量の掘削土が発生します。一方で、使う資材の量も相当量になります。したがって建設分野で資源の有効利用を進めることは、社会全体でみても循環型社会の構築に非常に意味のあることがわかります。そのようなことから建設分野では、副産物の発生をできるだけ減らしつつ適切に処理を行い、有効利用(再利用)できるものは有効利用することで、新材の利用を減らしていくという取組みが長く行われてきましたが、これらの取組みの全体は「建設リサイクル」とよばれます。
建設副産物の発生や処理の実態は、国土交通省によって概ね5~6年ごとに調査が行われ、「建設副産物実態調査」とよばれています。直近で行われた2024年度の調査結果はまだ公表されていませんが、その前の2018年度の調査によると、建設廃棄物全体では95%以上が再資源化あるいは縮減され、発生土では約80%が利用されています1)。この調査結果に基づいて「建設リサイクル推進計画」が1997年以来やはり約6年間隔で策定・更新されていて、最新の第五次の推進計画2)では、これまで“量”への取組みに一定の成果がみられたことから、今後は“質”の向上を進めていく必要性がうたわれています。
3. 建設リサイクルにおける“質”
ところで、建設リサイクルにおける“質”とは何でしょうか。私は、建設リサイクルの“質”には様々な概念があると思っています。中でも最もわかりやすい“質”の概念は、“カスケードリサイクル”“水平リサイクル”といった用語で表されるもので、リサイクル材の品質と用途を対象としています。ここで“カスケード”とは“滝”あるいは“滝が連なったもの”を意味する言葉だそうで、使用済みの製品を別の(質の低下した)製品につくりかえるのがカスケードリサイクルとなります。カスケードリサイクルでは、滝を経ることで水が有していたポテンシャル(エネルギー)が減っていくように、新たな別の製品はもとの製品よりも質が低下します。一方、使用済みの製品をいったん原料レベルに戻した上で、再び同じ製品につくりかえる(質の低下がない)のが水平リサイクルです。コンクリート塊を対象にしたこれらの例を表-1に示してみました。コンクリート塊では、モルタルなど付着物の除去の程度によって「再生骨材H、M、L」の3段階の品質でJISが定められ、中でも再生骨材Hはセメントコンクリートに利用できます。一方、世の中の実態としてはセメントコンクリートの骨材への利用は少なく、再生砕石としての利用が多いのが現状と言われています。さらに、首都圏や近畿圏では需給バランスでみれば供給過多の傾向にあるとも言われていて、コンクリート塊の利用の促進が、建設リサイクルにおける課題の一つとなっています。
表-1 水平リサイクルとカスケードリサイクルの例
(コンクリート塊の場合)
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分類 |
内容 |
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水平リサイクル |
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カスケードリサイクル |
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このような“質”の視点は、“発生土”では、より重要と考えられます。土には様々な品質のものがありますので、ある現場で出てきた発生土を別の現場で使う場合、その発生土の品質が、使われようとしている現場の用途に適したものか判断しなければなりません。もし品質が用途に適していないということになると、改良を行うか、別の発生土を調達する、ということになりますが、そのための交通整理の指標として、土質区分基準と適用用途標準が定められ、運用されてきました。具体的には、表-2に示すように発生土を品質によって第1種~第4種建設発生土ならびに泥土の5つに区分し、それぞれに適用用途が定められています。ここで、発生土は、要求品質のより高い用途に使われていくことがのぞましいということが言えます。さらに、できあがった構造物そのものの“質”、つまりしっかりとした構造物ができあがっていることも大前提となります。また、処理や輸送の過程や、管理・マネジメントにおいて、“質”を高めていくことも意味があると考えられます。有効利用のために、エネルギーや資源を過剰に使って品質を改善することは得策ではありませんし、エネルギー効率の悪い運搬も避けられるべきでしょう。カーボンニュートラルへの貢献も現代社会では外すことはできません。このように一口に“質”といっても、発生土や建設リサイクルの分野では様々な概念が考えられますので、適切な指標の導入など“質”の評価と向上に向けた取組みそのものが重要と言えるのかもしれません。表-3には、建設リサイクルにおいて考えられうる“質”の例をあげてみましたが、「求められる質とはなにか」を問うことそのものが、質の向上につながりうるともいえると思います。
表-2 建設発生土の土質区分と適用用途標準
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土質区分 |
性状 |
コーン指数の目安 |
主な適用用途 |
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第1種建設発生土 |
砂・礫・礫質土など |
定めなし (高品質) |
道路用盛土、路体、路床、構造物の裏込め、埋戻しなど |
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第2種建設発生土 |
砂質土・礫質土など |
≧ 800 kN/m2 |
道路用盛土、路体、工作物・建築物の埋戻し、土木構造物の裏込め、河川堤防など |
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第3種建設発生土 |
施工性が確保された粘性土など |
≧ 400 kN/m2 |
土地造成、一般堤防、比較的強度が求められない盛土(用途により工夫・施工機械の選定に注意が必要) |
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第4種建設発生土 |
粘性土・火山灰質粘性土など |
≧ 200 kN/m2 |
そのままでは適用が限定的(原則として土質改良を行った上で盛土等に利用) |
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泥土 |
水分が多く強度が低い泥状の土砂 |
< 800 kN/m2 |
そのままの李よいうは困難(セメントや石灰等による土質改良後に水面埋立等へ利用) |
表-3 建設リサイクルにおける質の例
| 内容 |
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4. 盛土規制法と発生土の利用の促進
2021年7月3日静岡県熱海市で土石流災害が発生して20名を超える方々がお亡くなりになりましたが、土石流の原因が不適切に盛り立てられた残土(ここではあえて“発生土”と言わず“残土”と言います)による盛土が豪雨により崩壊したことから、土の取扱いの厳格化や適正化が強く求められました。2022年5月には異例と言われる早さで「宅地造成及び特定盛土等規制法」が制定されています。いわゆるいわゆる「盛土規制法」です。土を盛り立てる場合の安全性の確保、スキマのない規制、責任の所在の明確化、実効性のある罰則などが定められています。
この盛土規制法は「出てきた土をきちんと盛る」ための、いわゆる出口の制度であるのに対して、「発生土が出ないようにする」「出てくる土をきちんと管理する」といった入口の制度も同時に整えられています。「資源の有効な利用の促進に関する法律」の省政令改正に伴うストックヤードの登録制度や指定利用等の推進などがその具体的なものになります3)。この資源有効利用促進法は2000年公布、2001年に施行された法律で、建設業は特定再利用業種に指定され、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材、建設発生土が指定副産物として利用の促進に努めることとされていたものです。盛土規制法の公布にあわせて、資源有効利用促進法でも2022年9月に政省令の改正等がなされました。その概要は表-4に示す通りで、いずれも再生利用の促進と不適正処理防止の観点から計画制度が強化されたものとなっています。対象工事や事業者の拡大(表―4の(1)、(3))、責任の明確化ならびに徹底(同(2)、(5))などが定められ、盛土規制法との連携がはかられています。また、新たにストックヤードの登録制度が設けられましたが(同(4))、これはストックヤードに搬入された場合でも適正な処分等がされること、ならびに優良なストックヤード等の育成により建設発生土のリサイクルが促進されること、を目的としています。
表-4 資源有効利用促進法の政省令改正等の概要
(国交省資料に基づき作成)
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項目 |
内容 |
施行日 |
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(1)再生資源利用促進計画の作成対象工事の拡大等 |
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2023年1月1日 |
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(2)元請業者責任の強化等 |
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2023年1月1日 |
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(3)勧告・命令の対象事業者の範囲の拡大 |
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2023年1月1日 |
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(4)ストックヤード運営事業者の登録制度 |
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2023年5月26日 |
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(5)適性な搬出先への確実な搬出等 |
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2023年5月26日 |
発注者が現場から搬出される建設発生土の具体の搬出先を指定する場合を「指定処分」あるいは「指定利用等」と呼んでいます。前述の建設リサイクル推進計画2020によると、国の発注工事はほぼ全てで指定処分が適用されていますが、自治体発注工事では指定処分されていない公共工事は約14%となっているそうです。したがって、指定処分の適用を拡大することで、行き先が不明確な土の発生を抑制していくことが求められます。なお、推進計画2020までは「指定処分」という用語が使われていましたが、熱海の土石流災害を受けて内閣府で2021年主催された検討会の提言4)では、「指定処分」ではなく「指定利用等」という語が使用され、その後はほぼ「指定利用等」が使用されているようです。
5. 発生土=建設発生土+建設汚泥
建設工事で副次的に発生する土砂や汚泥は「発生土」と呼ばれます5)。建設工事では水分が多くて泥濘状を呈する掘削土が発生することがありますが、このような発生土は泥土(あるいは泥状掘削物)とよばれます。泥土の中でも、シールドトンネル掘削工事から発生する掘削土への対応は近年の重要課題の一つとなっています。なお、泥土のうち産業廃棄物として取り扱われるものは建設汚泥に分類されます。すなわち、発生土のうち、「標準仕様のダンプトラックに山積みができず、その上を人が歩けない状態」のものが「建設汚泥」と定義6)されています。また、発生土から建設汚泥を除いたものは「建設発生土」に分類されます(図-1)。
我々の産業活動や生活で不要になったものは「廃棄物」として「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の下で扱われます。ここで、建設汚泥は産業廃棄物として取り扱われますが、建設発生土は産業廃棄物として取り扱われません。廃棄物には、運搬や処理は廃棄物処理業の許可を受けた業者のみが行うことができ、マニフェストへの登録が義務付けられるなどの厳しいルールが課されており、建設汚泥はそのルールの下で取り扱われることになります。一方、建設発生土は廃棄物ではないため、マニフェストの登録など処理の足跡を追う仕組みは法的には求められていませんが、トレーサビリティーを確保する取組みの例はあります2)。なお、マニフェストとは、発生から搬出・運搬・中間処理・最終処分の全ての過程を記録する制度のことです。
泥土あるいは建設汚泥は、もともとは土ですが、工事で用いられる添加剤の有無や水分量の多寡などによって性状が変化し、泥状となったものです。したがって、泥土は、そのまま盛りたてると崩れたり、あるいは盛りたてができないなどの問題がありますが、脱水したり固化材などで改良して流動性が克服され、一定の強度と耐久性が確保できれば、土質材料としての再利用は技術的には問題ないものと考えられます。現状ではこのような泥土を、廃棄物ではない「土」として扱うか、産業廃棄物である「建設汚泥」として扱うかは、工法や性状等によって判断されていて、その判断は必ずしも統一されてはいません。このようなゆらぎはあるものの、基本的な材料特性と出自を鑑みて、建設汚泥を含む泥状掘削物は適切な処理を行った上で「土のように使う」方向で収斂していくことが望ましいと考えます。
しかし、「土のように使う」有効利用を進めるべきと言いながら、泥状掘削物の処理と有効利用は、不適正な処理と隣り合わせになりやすいというジレンマももっています。また、泥状掘削物を処理したものが一般の土よりも高い値段で買われるケースは考えにくく、有効利用のハードルがあがっているという事情もあります。このような現状も踏まえ、不適正処理を防止しつつ有効利用が進むよう、建設汚泥については、① 有償譲渡、② 自ら利用、③ 大臣認定、④ 個別指定の制度が設けられているほか、2020年には「建設汚泥処理物等の有価物該当性に関する取扱いについて(通知)」が環境省より示され、図-2の(b)に示すスキームとして運用されているところです。
参考文献
1) 国土交通省:平成30年度建設副産物実態調査結果, 2020.
2) 国土交通省:建設リサイクル推進計画2020 -「質」を重視するリサイクルへ, 2020.
3) 祢津知広:建設発生土有効利用の推進、基礎工、52(8), pp.6-9, 2024.
4) 内閣府(2021):盛土による災害の防止に関する検討会提言.
5) 国官技第112号、国官総第309号、国営計第59号(平成18年8月10日):発生土利用基準.
6) 国官技第50号、国官総第13号、国営計第41号(平成18年6月12日):建設汚泥処理土利用技術基準.


