2026年新春号表紙

基調講演「産業廃棄物行政の現状と今後の方向性」

[基調講演の概要は、以下のとおりです。掲載したパワーポイントのスライドは、講演で使用されたものの中から抜粋したものです。]

(1)循環経済について

環境省 環境再生・資源循環局<br>廃棄物規制担当参事官 大川正人氏 環境省 環境再生・資源循環局
廃棄物規制担当参事官 大川正人氏

 令和6年8月には循環基本計画が改定された。「循環経済を国家戦略に」という副題の通り、循環経済への移行を国家戦略として推進し、資源循環を通じて、産業競争力の強化、地方創生、気候変動などの社会課題に対応していく方針が示された。

 「循環経済」という言葉には、「もの」の循環だけでなく、その経済的な側面に着目して、使用・消費されたものを再び価値にあるものに戻していこうという考え方が込められている。再び価値のあるものに戻していくためには、再生材の供給側でのリサイクルの質を高めていくことと、需要側での積極的な選択という両面の取組が必要となる。再生材の需要が高まることで価格が上がり、更に再生材の供給が高まるという流れを目指している。

(2)再資源化事業等高度化法について

 再生材の供給側でのリサイクルの質を高めていく取組の一つが、昨年の国会で成立した再資源化事業等高度化法である。

 国が再資源化事業の高度化に関する認定を行い、廃棄部処理法の処分業の許可等に係る特例を設ける仕組みとなっている。「再資源化事業の高度化」としては、①広域的な収集を行って再資源化を行う事業、②分離・回収技術の高度化に係る設備の導入、③再資源化工程における温室効果ガス排出の少ない設備導入の3つの類型がある。

 令和7年2月に基本方針、判断基準に係る規定が施行されており、今後、11月の認定基準や報告公表制度の施行に向けて準備を進めている。(注:11月21日に施行された。)

(3)太陽光発電設備の大量廃棄に備えた対応

 カーボンニュートラルへの対応として、再生可能エネルギーの普及拡大は必須であり、中でも太陽光発電の普及が進んでいるが、2030年代には太陽光パネルの大量廃棄が見込まれている。いずれ寿命が訪れ、大量に廃棄される時代がやってくる。特に、2030年代後半以降に、使用済太陽光パネルの排出量が顕著に増加することが見込まれる。現状では、リサイクルよりも安価な埋立処分が選択され、十分な再資源化が行われていない。

 環境省と経済産業省では、昨年9月から合同審議会で検討を進め、本年3月に意見具申として課題と方向性の整理を行った。この意見具申を踏まえた具体的な制度設計の検討を進めてきたが、再資源化費用を製造業者に求めるという点に関して、他のリサイクル関連法制との整合性が指摘され、現在、制度案の見直しに向けた検討作業を進めている。

 また、こうした制度的検討と並行して、来年度概算要求には、太陽光パネルのリサイクル技術の実証や設備の導入補助などの予算を計上しており、こうした事業を通じてリサイクルを推進してまいりたい。

(4)廃棄物処理制度に係る検討状況

 令和6年12月に中央環境審議会に廃棄物処理制度小委員会を設置し、不適正スクラップヤードへの対応、PCB廃棄物等の対応、災害廃棄物への対応の3つの課題について議論を行っており、本年6月に中間取りまとめがなされている。

 不適正スクラップヤードに関しては、金属スクラップや雑品スクラップ等の保管や処分を行うスクラップヤードの一部において、騒音、悪臭、水質・土壌汚染、火災等が問題となっている。こうした問題に対応するため、一部の自治体においては条例を制定しているが、条例のない自治体にスクラップヤードが移転していくという実態もあり、全国一律の制度が必要と考えており、対象物品や規制の内容等について検討を進めている。

 また、PCB廃棄物については、今年度末で中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)における高濃度PCB廃棄物処理事業が終了するが、それ以降に散発的に発見されうる高濃度PCB廃棄物の処理体制の確保が必要である。また、低濃度PCB使用製品に関しては、現在は規制されていないが、今後、それらが廃棄物となった際に確実に処理を行っていくことが必要であるため、使用段階での届出と管理に関する制度を設けることを検討している。

 さらに、災害廃棄物については、令和6年能登半島地震での経験や教訓を踏まえ、自治体に対する支援の強化を行っていくという観点から、専門支援機能や災害支援協定、最終処分場の容量確保等の検討を行っている。

 この中間取りまとめを踏まえ、小委員会において更なる審議をいただきつつ、制度的措置の検討を進めていく。

(5)有害廃棄物の適正処理に係る情報伝達の強化

 有害廃棄物の適正処理を推進するためには、排出事業者が必要な情報を適切に把握し、伝達する体制の強化が不可欠である。

 しかし、排出事業者から処理業者への廃棄物情報の伝達が十分ではなく、廃棄物処理工程から化学物質が環境中に流出した事例が発生しており、情報伝達の推進が課題であった。このため、平成29年の中央環境審議会の意見具申を受けて、環境省において検討会を開催し、情報伝達の在り方等について検討を進めてきた。

 こうした経緯で、今年4月に、委託基準に係る廃棄物処理法施行規則を改正した。具体的には、化学物質排出把握管理促進法、いわゆるPRTR法の第一種指定化学物質に関する情報を、排出事業者が処理委託契約の中に明記することを求めている。対象になる事業者はPRTR法の第一種指定化学物質等取扱事業者になる。

 WDSガイドラインについても、この省令改正の内容を追加するとともに、様式等について更新している。

 本年4月に施行規則を公布済みであり、現在は、この制度改正の周知を行っている。来年1月に同施行規則が施行される。

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