太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律の制定
環境省環境再生・資源循環局総務課制度企画室
室長 岡﨑 雄太 氏
1.はじめに
使用済太陽光パネルは、現行の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づき適正処理が義務付けられており、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23年法律第108号。以下「再エネ特措法」という。)に基づくFIT/FIP制度における事業用太陽光発電設備(10kW以上)には、廃棄等費用の積立制度が措置されている。
一方、2012年の再エネ特措法の施行以降の太陽光発電設備の大量導入に伴い、2030年代後半以降、太陽光パネルの排出量が顕著に増加し、年間最大50万トン程度となり、最終処分場の残余容量を圧迫し、廃棄物処理全体に支障が生ずるおそれがあることから、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図るため、廃棄の抑制及びリサイクルの推進を図ることが重要である。
太陽光パネルの廃棄の抑制を図るためには、環境に配慮した設計がされた太陽光パネルの使用や、リユース等を推進することが重要である。
また、太陽光パネルのリサイクルについては、①現時点では埋立処分費用とリサイクル費用との差額が大きいこと、②全国的な処理体制が構築途上であることが課題である。このため、予算措置等も活用し、これらの課題への対応を図りながら、まずは費用効率的にリサイクルが実施可能な多量に廃棄をしようとする太陽光発電事業者等からリサイクルの規制を段階的に強化し、将来の大量廃棄時までに、住宅用を含めた幅広い太陽光パネルが経済合理的にリサイクルできる環境整備が重要である。
こうした観点から、環境省及び経済産業省においては、2024年9月から、中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会と産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループの合同会議で審議を行い、新たな法制度案の検討を進めてきた。
2025年3月に取りまとめられた審議会の報告書を踏まえ、法制的な観点からさらに検討を進め、本年4月に「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案」を閣議決定し、国会での審議を経て、5月末に「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」(令和8年法律第33号。以下「太陽光パネルリサイクル法」という。)が成立した。
本稿では、太陽光パネルの廃棄・リサイクルの現状及び太陽光パネルリサイクル法の内容について紹介する。
2.太陽光パネルの廃棄・リサイクルの現状
2.1 太陽光パネルの排出量の推移
我が国では、再エネ特措法に基づく固定価格買取制度が2012年に始まり、それ以降、2022年度までの約10年間、毎年約4.6~9.4GWの設備が新たに導入されるなど、太陽光発電設備の導入が拡大されてきた。
また、第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)の関連資料では、電源構成に占める太陽光発電の割合が2040年度時点で約23~29%(2023年度時点では約9.8%)と示されており、脱炭素社会の実現に向けては、今後も太陽光発電の継続的な導入が必要である。
太陽電池の耐用年数は20~30年程度であるため、2030年代後半以降、使用済太陽光パネルの排出量が顕著な増加が予想されており、2025年から2050年までの年間排出見込量は平均約25万t、ピーク時の年間排出見込量は約50万tに上ると推計される。
図1 太陽光パネルの排出量予測(推計結果)
大量に排出される太陽光パネルをそのまま埋め立てれば管理型最終処分場の残余容量の顕著な減少につながり、自然環境への負荷をもたらすこととなる。このため、リサイクルを着実に進めていく必要がある。
2.2 国内での廃棄・リサイクルの状況
一般に普及している太陽光パネルについては既にリサイクル技術が確立し、リサイクル施設の数は増加傾向にある。全国のリサイクル施設は太陽光パネルの専用施設に限っても87か所、その処理能力は合計約13万t(2025年11月時点)に上り、2025年時点の推計排出量である約8万tを上回る。排出量が少ない現時点では、排出される太陽光パネルの全量をリサイクルできる処理能力はあるが、8府県には太陽光パネルの専用リサイクル施設が存在せず、その立地にはまだ偏りがある。
しかし、これまで、廃棄する太陽光パネルに対するリサイクルは義務付けられておらず、リサイクルを行うかどうかは排出者の任意の選択によるものであり、大手の太陽光発電事業者に対するアンケート調査結果によれば、リサイクルの実施を検討していない者が半数近くを占めている。
リサイクル施設の稼働率が低い現状において、太陽光パネルの埋立処分費用が2,000円/kW程度であるのに対し、リサイクル費用は8,000~12,000円/kW程度と、埋立処分費用とリサイクル費用の差額が大きい状況にある。
3.太陽光パネルリサイクル法について
3.1 基本的な考え方
太陽光パネルのリサイクルについて、①現時点では埋立処分費用とリサイクル費用との差額が大きいこと、②全国的な処理体制が構築途上であることが課題となっている。
このため、予算措置や既存制度も活用し、これらの課題への対応を図りながら、まずは、費用効率的にリサイクルが実施可能な多量に廃棄をしようとする太陽光発電事業者等からリサイクルの規制を段階的に強化していくことで、太陽光パネルの幅広い廃棄に関する者へのリサイクルを義務化するために必要な環境整備を行っていくこととした。
以上のことから、太陽光パネルリサイクル法では、多量の事業用太陽電池(太陽電池であって、収益事業において使用されているもの又は使用されていたものをいう。以下同じ。)の廃棄をしようとする者(太陽光発電事業者等)に国が定める判断基準に基づくリサイクルの実施に向けた取組を義務付けるとともに、費用効率的なリサイクル事業の計画を国が認定する制度を創設し、都道府県ごとの廃棄物処理法の許可を不要とする等の措置を講ずることとした。
3.2 主な内容
図2 太陽光パネルリサイクル法の主な措置事項
3.2.1 再資源化の対象について
本法律では、リサイクルの対象となる太陽光パネルを「太陽電池」として規定している。この「太陽電池」とは、太陽光を電気に変換する機器(板状であり、かつ、ガラスを材料として使用した部品を含む機器であって、その重量が政令で定める重量以上のものに限る。)であって、当該機器が廃棄物となった場合にその再資源化等を実施することが技術的及び経済的に可能であり、かつ、有効なものとして政令で定める種類の太陽電池と定められている。
現時点では、シリコン系太陽電池は原則としてリサイクルが可能、化合物系太陽電池は一部の施設ではリサイクルが可能であるが、ペロブスカイト太陽電池はリサイクル技術を開発中の段階である。これらの点も踏まえて、「太陽電池」の具体的な範囲については、今後、審議会等での検討を経て政令で定める予定である。
3.2.2 国による基本方針の策定
主務大臣(環境大臣及び経済産業大臣。以下同じ)は、太陽電池の廃棄の抑制及び太陽電池廃棄物(太陽電池が廃棄物となったものをいう。以下同じ。)の再資源化等の推進を総合的かつ計画的に図るための基本的な方針を定めることとする。この基本方針では、各主体の役割、リサイクル目標、施設整備の促進、費用低減・技術開発等の方向性に加え、太陽電池の廃棄の抑制及び太陽電池廃棄物の再資源化等の円滑な実施に資する太陽電池の製造・販売を促進するための方策等について規定することを予定している。
図3 基本方針のイメージ
3.2.3 事業用太陽電池廃棄者による事業用太陽電池の廃棄の抑制及び事業用太陽電池廃棄物の再資源化等の実施のための措置
①事業用太陽電池廃棄者の事業用太陽電池の廃棄の抑制及び事業用太陽電池廃棄物の再資源化等の判断の基準となるべき事項
主務大臣は、事業用太陽電池の廃棄の抑制及び事業用太陽電池廃棄物の再資源化等の実施を図るため、事業用太陽電池廃棄者(事業用太陽電池の廃棄をし、又はしようとする者をいう。以下同じ。)が事業用太陽電池の廃棄の抑制及び事業用太陽電池廃棄物(事業用太陽電池が廃棄物となったものをいう。以下同じ。)の再資源化等の実施に向けて取り組むべき措置に関し、判断の基準となるべき事項を定め、必要な指導及び助言をすることができることとする。
また、判断基準の内容は、再資源化等の状況やリサイクル費用の推移等を勘案し、段階的に強化していくこととしている。
判断基準の具体的内容は、事業用太陽電池の長期使用・リユース、事業用太陽電池廃棄物の処分方法を適切に選択するための検討の方法、排出された事業用太陽電池廃棄物の処分の適切な実施の確保に関する事項等について、今後、審議会等での検討を経て省令で定める予定である。
図4 太陽光発電事業者によるリサイクルの検討状況
②多量事業用太陽電池の廃棄の実施に関する計画
多量事業用太陽電池廃棄者(事業用太陽電池廃棄者であって、その事業用太陽電池の廃棄をしようとする事業用太陽電池の重量が政令で定める要件に該当するものをいう。以下同じ。)は、当該事業用太陽電池の廃棄をしようとするときは、当該事業用太陽電池廃棄物の処分の方法等を記載した当該事業用太陽電池の廃棄の実施に関する計画(以下「多量事業用太陽電池廃棄実施計画」という。)を主務大臣に届け出なければならないこととし、当該届出をした者は、当該届出が受理された日から原則30日を経過した後でなければ、その届出に係る多量事業用太陽電池廃棄実施計画に記載された事業用太陽電池の廃棄に関し、自ら事業用太陽電池廃棄物を排出し、又は他の者に事業用太陽電池廃棄物を排出する工事若しくは作業を行わせて当該事業用太陽電池廃棄物を排出させてはならないこととする。
主務大臣は、届出のあった多量事業用太陽電池廃棄実施計画の内容が上記①の判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、受理した日から原則30日以内に限り、当該届出をした者に対し、当該多量事業用太陽電池廃棄実施計画の変更その他の必要な措置をとるべきことの勧告及び命令をすることができることとする。
多量事業用太陽電池廃棄者の要件は、今後、審議会等での検討を経て政令で定める予定であるが、メガソーラーを対象に含めることを考えている。
図5 多量事業用太陽電池廃棄実施計画
3.2.4 太陽電池廃棄物再資源化等事業の実施のための措置
費用効率的なリサイクルを促進するため、太陽電池廃棄物再資源化等事業を行おうとする者は、当該太陽電池廃棄物再資源化等事業の実施に関する計画を作成し、主務大臣の認定を受けることができることとする。
当該認定を受けた者は、廃棄物処理法の規定にかかわらず、廃棄物の収集運搬業及び処分業を行うことができることとし、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物の保管数量の上限の特例の適用を認めることとする。
認定基準や保管数量の上限は、今後、審議会等での検討を経て、政省令で定める予定である。
3.2.5 製造業者等及び販売業者による太陽電池の廃棄の抑制及び太陽電池廃棄物の再資源化等の円滑な実施に資する措置
太陽電池の製造又は輸入を業として行う者(以下「製造業者等」という。)は、設計及び原材料等の種類について工夫をした太陽電池の製造又は輸入をし、また、太陽電池の販売を業として行う者(以下「販売業者」という。)は、当該工夫がされた太陽電池を販売するよう努めなければならないこととする。
製造業者等は、その製造し、又は輸入をする太陽電池について、その部品の材質及び成分並びにその重量の表示等必要な措置を講じ、また、販売業者は、太陽電池の長期間の使用及び再使用並びに太陽電池に係る太陽電池廃棄物の再資源化等に関する情報の提供を行うよう努めなければならないこととする。
図6 製造業者等及び販売業者による措置
3.2.6 財政上の措置等
国は、太陽電池の廃棄の抑制及び太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならないこととする。
環境省では、従来のリサイクル設備の導入支援や再生材の価値向上の技術実証に加えて、今年度から、保管施設の導入支援や収集運搬の効率化の実証にも取り組んでいる。また、再資源化事業等高度化法に基づく太陽光パネルの高度リサイクル設備の認定等を通じて、リサイクルの費用低減と体制整備の加速化を進めていく。
また、産業廃棄物処理事業振興財団は、産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律(平成4年法律第62号)で定められた業務のほか、認定事業者が認定計画に従って行う太陽電池廃棄物の再資源化等の用に供する施設の整備の事業に必要な資金の借入れに係る債務を保証すること、認定事業者が認定計画に従って行う研究開発に必要な資金に充てるための助成金を交付すること等の業務を行うことができることとし、所要の規定を設ける。
図7 主な太陽光パネルリサイクル関連予算
3.2.7 罰則
多量事業用太陽電池廃棄者が多量事業用太陽電池廃棄実施計画の変更等の命令に違反したとき100万円以下の罰金を科すこととするなど、所要の規定を設ける。
3.2.8 施行期日(附則)
本法律は、一部を除き、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
3.2.9 制度の見直しに向けた検討規定(附則)
政府は、太陽電池の排出量の見込み、再資源化等に要する費用の推移等を勘案し、必要があると認めるときは、多量事業用太陽電池廃棄者の要件の見直し、太陽電池の廃棄に関係する者における太陽電池廃棄物とする太陽電池の量の抑制及び太陽電池廃棄物の処分の方法としての再資源化等の選択に係る義務付け等所要の措置を講ずるものとする。
4.結び
太陽光発電事業については、この十数年で急速に拡大し、現在では我が国の発電量の約1割をまかなうまでに至ったが、他方、特に大規模な事業については、自然環境、安全、景観等の面について、様々な懸念が生じる事案が一部の地域にみられている。再生可能エネルギーの導入に当たっては、地域との共生や環境への配慮が大前提であり、廃棄段階における環境負荷を低減するリサイクルの実施は、地域との共生と環境への配慮を行いながら、太陽光発電を進めるための取組の一つである。
各地域において、太陽光発電事業者、廃棄物収集運搬業者、リサイクル事業者、ガラスメーカー等が連携し、リサイクルに取り組む動きが広がっている。
こうした取組が拡大するとともに、投資家や金融機関がリサイクルに取り組む太陽光発電事業者を後押しし、電力需要家がこうした太陽光発電事業者からの電力調達を選択することで、リサイクルの需要拡大と費用低減が加速していくことが期待される。
表1 リサイクルに取り組む太陽光発電事業者
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主な発電事業者 |
取組事例 |
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NTTアノードエナジー(株) |
協力会社の近畿電電輸送(株)が全国に構築したリサイクル体制を通じて、2023年度からリサイクルを開始。2030年頃までに太陽光パネルの100%リサイクルを目指すことを宣言。 |
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自然電力(株) |
保有資産における建設・運営・保守段階で排出される太陽光モジュールの100%について、リユース品としての販売または完全リサイクルを目指すことを宣言。 |
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ENEOSリニューアブル・エナジー(株) |
沖縄県うるま市で運転中の「うるまメガソーラー発電所」(12.2MW)のリパワリングを2025年に実施し、交換した太陽光パネルのリサイクルを実施。 |
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(株)ウエストホールディングス |
大坪GSI(株)、不二ライトメタル(株)、不二倉業(株)、丸紅メタル(株)との5社間で、2025年に戦略的業務提携を締結し、太陽光パネルのリサイクルスキームを確立。 |
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北海道電力(株) |
産業廃棄物処理業者、発電事業者、ガラスメーカー等の21の事業者・機関が参加する「使用済太陽光パネル資源循環推進・北海道コンソーシアム」(2025年4月設立)に参画。 |
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東北電力(株) |
2022年にPV CYCLE JAPANに参画。また、太陽光パネルのリユース・リサイクルに関する実証事業(環境省・2023~25年度)を実施。 |
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東京電力ホールディングス(株) |
グループ会社の東京パワーテクノロジー(株)が、2021年に太陽光パネルのリサイクル事業を開始。 |
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中部電力(株) |
グループ会社の(株)シーエナジーが、2023年に愛知海運(株)と共同で太陽光パネルのリサイクル事業を開始。 |
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関西電力(株) |
TREホールディングス(株)、(株)トクヤマとの3社間で、2025年に太陽光パネルのリユース・リサイクルに関する協定書を締結し、リサイクル事業のモデル構築に向けた検討を開始。 |
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中国電力(株) |
(株)こっこー、(株)スナダ、中電プラント(株)との4社間で、2024年に太陽光パネルのリユース・リサイクルに関する業務提携契約を締結。 |
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九州電力(株) |
(株)新菱、AGC(株)等との間で、2024年に包括連携協定を締結。2026年5月に、九電グループ5社で撤去から収集・運搬、リユース・リサイクル等の処理までを一括で行うワンストップサービスを開始。さらに、九電グループ保有のパネルの全量リサイクルの方針を宣言。 |
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沖縄電力(株) |
拓伸会(拓南グループ)との間で、2022年に連携協定を締結し、太陽光パネル等の資源循環のシステム構築・技術開発を目指すことを宣言。 |
環境省としても法律・予算等の様々な措置を通じて、こうした取組を支援してまいりたい。


