2026年夏号表紙

栃木県におけるサーキュラーエコノミーへの移行に向けた取組について

 

 

1 はじめに

栃木県<br>環境森林部資源循環推進課 <br>副主幹 佐藤 正浩 氏 栃木県
環境森林部資源循環推進課
副主幹 佐藤 正浩 氏

 栃木県は、日本一の「いちご王国」であり、日光の社寺などの歴史・文化、北関東のど真ん中に位置する恵まれた県土、世界に誇る日光国立公園を有するほか、自動車・航空機・医療機器をはじめとする工業製品を製造する「ものづくり県」としても知られており、令和5年には「医療用X線装置」「歯科用機械器具」「シャッター」について、全国1位の出荷額を記録するなど、多様な魅力・実力を有しています。

 また、本県出身の大関和さんを主人公のモチーフとした連続テレビ小説「風、薫る」(NHK)の放送が3月30日から始まり、県内各地での巡回展などが開催されています。

 資源循環を巡る情勢については、「サーキュラーエコノミー(CE)への移行」が国家戦略として掲げられ、地方自治体にも地域の実情に応じた役割分担が求められるようになりました。栃木県では、令和元年に県内25市町とともに「栃木からの森里川湖プラごみゼロ宣言」を行うなど、独自の資源循環施策を推進してきましたが、CEは資源循環に加え「経済成長」を含む経済システムであるため、環境行政のみでは十分な企画・推進が難しいという課題がありました。そこで、産業振興を担う産業労働観光部と連携し、環境と産業の両面から取り組む体制を整えました。

2 栃木県における資源循環の方向性

〔華厳の滝〕 〔華厳の滝〕

 本県では5年ごとに県の総合的な行政計画の見直しを行っており、資源循環行政の取組指針である「栃木県資源循環推進計画」も令和7年度に終期を迎えることとなっていました。このため、新たな計画策定にあたり、「サーキュラーエコノミーへの移行」を基本目標とする方向で検討を開始しましたが、検討にあたっては、「国が進めているから」という理由に留まらず、栃木県として取り組む意義を深掘りする必要があります。結果、県内の産業構造、プラスチック関連産業の集積度、先進的な技術を有する企業の存在などを踏まえると、栃木県はCE型社会への移行を進める上で高い潜在力を持っていることを再確認できました。 

3 サーキュラーエコノミー移行に向けた施策展開

(1)県内産業の強みを活かした循環モデルの創出

ペットボトルの水平リサイクルイメージ 協栄産業㈱提供 ペットボトルの水平リサイクルイメージ 協栄産業㈱提供

 本県は高度リサイクルの代表例である「ペットボトルの水平リサイクル」を全国で初めて実用化した企業を有するほか、県内にはプラスチック産業が数多く集積しており、再生樹脂を活用した製品づくりといった地場産業振興、ひいては地方創生につながる取組の創出も期待できる潜在力を有しています。このようなことを踏まえ、新たなビジネスモデルの構築に向けた環境整備を進めていくこととしました。

(2)環境3分野の計画を統合した「栃木県環境総合計画」

 本県では、脱炭素、資源循環、生物多様性の各分野で個別の計画を策定していましたが、それぞれの取組の連携を強化するため、有識者で構成する県環境審議会やパブリックコメント等を経て、3計画を統合した「栃木県環境総合計画」を本年3月に策定しました。計画は、今後5年間の資源循環施策の基本方針として「サーキュラーエコノミーへの移行」を基本目標の1つに位置付け、同一の施策が複数の分野に効果をもたらす点(例:アルミやプラスチック等のリサイクルは資源確保と温室効果ガス削減の双方に寄与)を明確にし、部局横断的な推進を図ることを狙いとしています。

4 令和7年度の取組

 令和8年度からの本格的な取組をスムーズに進めるため、令和7年度には以下の事 業を実施しました。

(1)事業者向け講習会の充実

 本県で従来から実施している産業廃棄物排出事業者及び処理業者向けの講習会にお いて、CEに係る先進的な取組を実施している事業者様に講演いただき、県内の事業者向けへの普及啓発に努めました。

講演事業者

テーマ

川上産業株式会社

気泡緩衝材プチプチ®の資源循環について

日榮新化株式会社

(資源循環プロジェクト)

ラベル台紙の水平リサイクル事業「資源循環プロジェクト」

リバー株式会社

(TRE ホールディングス株式会社)

サーキュラーエコノミーの実現に向けた静脈産業の役割期待

(2)マッチングセミナーの開催

マッチングセミナーの様子 マッチングセミナーの様子

 本年2月、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団との共催で、製造業とリサイ  
クル業の双方が参加するマッチングセミナーを開催しました。基調講演、先進県(埼玉県)の取組紹介のほか、県内企業による現状・課題の共有、グループディスカッション等を実施しました。グループディスカッションに当たっては、今後の連携につながるよう、参加者を事業所在地の近接性及び循環資源の種類ごと(廃プラ、建設廃棄物)にグループ分けを行いました。結果、多くの企業間の意見交換、情報共有が図られるとともに、参加者同士のつながりが確実に強化され、現在、参加者同士での新たなビジネス創出に向けた取組も進んでおります。
 

5 令和8年度以降の主な取組

 本県の有する潜在力や新たに策定した計画に基づき、以下の事業を令和8年度予算に計上しました。新たなビジネスモデルの構築に向けた環境整備や県民・事業者向けの普及啓発など、本格的な取組加速に向けた「ステップ1」として取り組み、CEへの移行を推進していく考えです。
 

⑴製造業とリサイクル業とのマッチング支援

 引き続き、動静脈企業間の意見交換・情報交換を促すマッチングセミナーを実施予定。令和8年度からは、技術面・ビジネス面から連携できる可能性が高い企業グループに対して専門家による伴走支援も実施し、事業化に向け取組を後押しする。

⑵サーキュラーエコノミー型ビジネスモデル創出の補助金制度

県内の中小企業を含む複数の企業等が連携して取り組むサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの創出を通じ、資源の循環利用と県内産業の成長を実現することを目的とし、サーキュラーエコノミー型ビジネスモデル構築支援事業を実施

 

【補助率2/3、上限7,500千円。採択件数4件程度】
※1次募集は終了しましたが、今後2次募集も実施予定。補助の条件など詳しくは県HPをご確認ください。
 

⑶県民や事業者への普及啓発

 県民や事業者等を対象として、CEの意義や必要性、日常生活や消費行動の中で実践可能な具体的取組を分かりやすく伝える普及啓発動画を制作し、理解の促進及び主体的な行動変容を促す。

⑷製造業者を対象としたセミナーや研究会の開催

 県内製造事業者のCEへの取組を支援するため、セミナーを開催するほか、製造業者等で構成するプラスチック資源循環研究会、同ワーキンググループにおいて、再生材を活用した成形加工技術の高度化を図る。

 

第1回セミナー概要は以下のとおりです。

日時:令和8年6月22日(月)13:30~16:30
場所:栃木県産業技術センター  多目的ホール
開催内容:

  1.  講演「サーキュラーエコノミー実現に向けた現状と課題」  
    講師 早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 所 千晴 氏
  2. 栃木県の取組紹介
  3. 令和8年度プラスチック資源循環研究会及びWG活動計画の紹介

 

セミナーの様子 セミナーの様子

6 課題と今後の展望

 サーキュラーエコノミーの社会実装に向けては、QCD(品質・コスト・納期) の面で解決すべき課題がまだまだありますが、資源有効利用促進法の施行、世界的な再生材利用拡大の潮流、輸入規制の強化などを踏まえると、再生材の確保や循環型産業の構築は、将来ますます重要性を増すことが確実であると考えております。
 栃木県としては、サーキュラーエコノミーへの移行を確実に前進させるため、産業界・行政・県民と連携しながら様々な取組を着実に進めて参ります。皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
 

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