川崎市における資源循環の推進に関する取組について
1 はじめに
川崎市環境局生活環境部廃棄物政策担当 担当係長
岩橋裕太氏
また、市内には多くの大学や研究機関、先進企業が立地しており、イノベーション創出の拠点としても発展しています。産業力と都市機能、高い交通利便性、豊かな自然環境を兼ね備えた川崎市は、持続可能な都市の実現に向けて挑戦を続けています。
2 川崎市循環型社会形成推進計画
近年の廃棄物を取り巻く状況は、国が循環経済への移行を国家戦略として位置づけるなど、脱炭素化や資源循環をめぐる社会環境が大きく変化をしています。こうした状況を踏まえ、一般廃棄物と産業廃棄物の枠組みにとらわれず、素材・製品別の高度なリサイクルの促進や、市民・事業者と協働した施策の一層の推進を図るため、一般廃棄物処理基本計画と産業廃棄物処理指導計画を統合し、一体的な計画とする「川崎市循環型社会形成推進計画」を令和8(2026)年3月に策定しました。
本計画の3つのポイントは、(1)循環経済や脱炭素化の視点など多様なアプローチにより、2050年に向けた目指すべき姿を明確化したこと、(2)循環経済への移行に対応するため、一般廃棄物と産業廃棄物を包含した資源循環施策へ再構築したこと、(3)循環経済・資源循環、脱炭素、安全・安心に資する事業を重点事業としました。
3 本市のリサイクルのポテンシャル
川崎市は、ごみの減量化・資源化に市民や事業者と協働して取り組み、「1人1日あたりのごみ排出量」が政令指定都市で最少となるなど、大きな成果を挙げています。ただ、その道のりは平坦なものではありませんでした。
昭和中期、公衆衛生の確保の観点から、生ごみの毎日収集や可燃物の全量焼却体制を全国に先駆けて確立する等、近代的な処理システムの構築に努めてきましたが、大量生産・大量消費の経済システムの進展により大量のごみが発生し、このままでは市のごみ処理能力を上回る状況が危惧されたため、平成2(1990)年に「ごみ非常事態」を宣言し、それまでの適正処理から資源循環・リサイクルへと大きく転換を図りました。
ごみの減量化・資源化に向けてそれまで焼却していたものを資源物として分別収集するほか、町内会等から推薦された市民に、ごみの減量とリサイクルの地域におけるボランティア・リーダー「廃棄物減量指導員」として活動してもらうなど、市民や事業者と一体となって施策展開をしてきました。こうした歴史の中で、高い環境意識を持つ市民・事業者の連携関係が醸成され、現在では本市の強みとなっています。
また、もう一つの本市の強みとして、川崎臨海部のプラスチックリサイクル施設の集積があります。本市の令和6年(2024)年度のペットボトル収集量は約5,700トン、プラスチック資源(プラスチック製容器包装及びプラスチック製品)の収集量は約14,400トンですが、本市の臨海部にはその量に対して、ペットボトルは約7倍、プラスチック資源は約14倍の処理能力を有するリサイクル事業者が集積しています。
さらに、本市には、臨海部にマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルのそれぞれの事業者が集積しているという、他都市にはない強みがあり、様々なプラスチックリサイクルの取組を進めています。
4 プラスチック資源一括回収の全市実施
平成25年(2013)年、それまで普通ごみとして焼却処理をしていたプラスチック製容器包装の全市分別収集を開始しました。更にプラスチックごみの焼却を減らすことを目的に、令和6(2024)年度から川崎区で、これまで焼却処分していたプラスチック製品を、プラスチック製容器包装と併せて「プラスチック資源」として収集してリサイクルする取組を開始しました。令和7(2025)年度から幸区・中原区へ拡大し、令和8(2026)年度からは全市で実施しました。
全市で一斉に開始するのではなく、実施地域を順次拡大していったのは、まず川崎区のみで開始し、年間を通じて処理した際の施設への影響を見極めながら、円滑な運用方法等を検討する必要があったためです。その後に、幸区・中原区の2区で開始したのは、プラスチック資源の処理を民間事業者に委託するという本市として初めての取組であり、より慎重に展開していく必要があったからです。
市が分別収集したプラスチック資源は、中間処理施設で選別や圧縮梱包を行い、リサイクル事業者に引き渡されます。従来のリサイクルルートは、公益財団法人日本容器包装リサイクル協会に委託する方法(容リ協ルート)で、同協会が入札によってリサイクル業者を決定するため、市町村は、リサイクルに直接関与できない仕組みになっています。
こうした中、令和4年(2022)年に施行された「プラスチック資源循環法」では、市町村自らでリサイクルできる方法(国の認定ルート)が新たに設けられました。これは、リサイクル業者と連携して再商品化計画を作成し、環境大臣及び経済産業大臣の認定を受けて、市町村自らがリサイクルを行うもので、本市では、令和7(2025)年度から容リ協ルートと国の認定ルートを併用したリサイクルを開始しました。
市町村自らがリサイクルを行う国の認定ルートの場合、市が収集した幸・中原区のプラスチック資源は、「株式会社J サーキュラーシステム」の川崎スーパーソーティングセンターに搬入後、選別などの中間処理を経てリサイクル原料になります。その後、マテリアルリサイクル事業者である「JFEプラリソース株式会社」においてペレット(合成樹脂の粒)などに、ケミカルリサイクル事業者である「株式会社レゾナック」においてアンモニアや水素などに生まれ変わります。
市民が出したプラスチック資源が複数の市内事業者との連携により、様々な手法でリサイクルされる仕組みで、これは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルなど、複数の高度なリサイクル事業者が立地している本市だから実現できるものです。
5 かわさきプラスチック循環プロジェクト
本市では、「かわさきプラスチック循環プロジェクト(愛称:かわプラ)」を令和4年(2022)年に設立しました。プラスチック資源循環に向けては、市民、事業者、行政のあらゆる主体が積極的に取り組むことが重要であり、「かわプラ」では、各主体が実施している様々な取組を連携して推進し、更なるプラスチック資源循環に向けた行動変容を促進するとともに、新たな取組を企画・展開するプラットフォームを構築していくことを目指しています。
その第1弾のプロジェクトとして、リサイクルの結果が分かりやすい「ボトルtoボトル」によるペットボトルの水平リサイクルに取り組みました。構成メンバーとして、リサイクル事業者である「J&T環境株式会社」「ペットリファインテクノロジー株式会社」、製造事業者である「アサヒ飲料株式会社」「サントリーホールディングス株式会社」、小売事業者である「株式会社イトーヨーカ堂」「株式会社セブン‐イレブン・ジャパン」の6者に参加をいただきました。
前述のとおり廃棄物処理事業は排出からリサイクルまで一連の流れがあるが、プラスチックを循環させるにはリサイクルされたものを製品として使うその先も重要になってきます。このプロジェクトでは、小売事業者がペットボトルの拠点回収を行い、リサイクル事業者が市内で回収されたペットボトルの水平リサイクルを行い、製造事業者がリサイクルペットボトルを利用し、また小売事業者でリサイクルペットボトル飲料の販売を行うという、本市の強みである2つのリサイクル技術で「マテリアルの環」「ケミカルの環」として資源が循環し、市民のリサイクル行動の拠点となる「回収拠点の環」を加えて「川崎モデルの3つの環」として取り組むことができました。
この取組をはじめとして、これまでに10以上のプロジェクトを創出し、参加メンバーも22者(2026年9月現在)まで拡大しました。
6 Kawasaki Circular Design Park
令和6(2024)年には「Kawasaki Circular Design Park」が立ち上げられました。これは、炭素循環戦略の実現に向けて、川崎臨海部エリアでものづくりの設計段階から循環型の仕組みづくりに挑戦する企業が連携して実施する取組を推進するために立ち上げ、企業間連携の取組への伴走支援や、一体的な情報発信に取り組んでいます。
具体的には、同年10月より、「花王株式会社、メビウスパッケージング株式会社、J&T 環境株式会社、株式会社J サーキュラーシステム、CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)」と連携し、市内の家庭ごみから一括回収されたプラスチック資源を、マテリアルリサイクルで水平リサイクルを目指す実証を実施しました。
本実証はプラスチックのサプライチェーンの全ての事業者(回収、選別、ボトル成形、製造メーカー)が連携した業種横断の取組であり、実際に各プロセスを上記の事業者が集まって現場で作業・確認を行うことで、構造的な課題の把握に繋げていきたいと考えています。また、海洋プラスチックごみ削減に向けて業種を超えた幅広い関係者の連携を強め、イノベーションを加速するためのプラットフォームである「CLOMA」とも連携しながら環境配慮設計や環境価値等の情報連携を行い、今後も実証の輪を広げていきます。
プラスチックの資源循環は、行政だけで解決できる課題ではありません。従来の製造、流通、消費、廃棄までの一方向の流れを、製品の設計段階からリサイクルや再利用を考慮し、廃棄物の発生を最小限に抑え、製品の使用後も可能な限り再利用されることを前提に回収やリユース、リサイクルといったプロセスを重視する循環型の流れにしていくためには、サプライチェーン全体で、その各プレーヤーが連携して関わっていく必要があります。そうした中で、行政ができること、やるべきことを見定めていくことが必要で、各プレーヤーをつなげていくことが行政の有効な役割の1つなのではないかと考えています。
7 事業者への普及啓発と資源循環の促進
循環経済の実現に向けて、廃棄物の排出段階においては、適切な分別を行うことが重要であり、排出事業者の理解と実践が不可欠です。本市では、排出事業者の資源循環に対する理解促進を目的として、令和8年(2026)年6月に、「資源循環のはじめかた~廃棄物の適正処理だけでは足りない?これからの排出事業者責任について~」をテーマとした事業者向け資源循環推進セミナーを開催しました。本セミナーでは、環境省によるプラスチック資源循環政策に係る講演に加え、本市から事業系廃棄物の適正処理や資源化の必要性について説明しました。さらに、市内企業による先進的な資源循環事例が紹介され、排出段階での適切な分別が、法令遵守だけでなく、循環経済の実現に必要不可欠であることが共有されました。今後も、こうした普及啓発事業を通じて廃棄物の排出段階における循環経済に向けた意識醸成を図っていきます。
8 今後の展望
国の「第五次循環型社会形成推進基本計画」では、「循環経済への移行」を気候変動、生物多様性の保全、環境汚染の防止等の環境面の課題と合わせて、地方創生や質の高い暮らしの実現、産業競争力の強化や経済安全保障といった社会課題の同時解決にもつながる国家戦略として位置づけています。循環経済は、資源を循環させながら活用していくことを前提とした経済システムであり、社会実装していくためには、生産性向上のためのリサイクル材の質と量の確保、事業採算性なども考慮して企業活動として成立していかなければなりません。
循環経済は国のみならず世界的な潮流ですが、本市にはこれまでに市民・事業者・行政が連携して資源循環等の取組を進めてきたことによる環境意識の高い市民・事業者の醸成、また、本市が収集しているプラスチック資源の量を遥かに上回るプラスチックリサイクル能力を有する事業者のほか、様々な産業の集積といった循環経済への移行を推進していく重要な要素をすでに有しています。
こうした本市の強みを活かすことで、本市で排出されたプラスチック資源等だけでなく、市外を含めた広域的な視点を持ってプラスチック以外の素材を含めた循環経済への移行をけん引し、資源循環をはじめとした諸課題の解決に貢献していけるものと考えています。


